今回は、製品/サービスの企画開発で考えることが重要なニーズやシーズの情報を詳細に整理できる、構造化という方法をご紹介します。

そもそもニーズ・シーズとは何か、という話については、こちらの記事を参考にしてください。

情報を構造化する(ロジックツリーを作成する)

情報を構造化する、というのは、情報と情報の間にある論理的な関係性を考え、階層的な整理を行うことです。

情報の全体像やつながりを詳細に整理するには、情報を構造化することが有効です。これは、ロジックツリーを作成することだと考えてもらっても構いません。

ロジックツリーとは、木が幹・枝・葉と分かれていくように、情報を詳細に分解していくものです。下図のように、Xという情報はAとBとCという要素で構成され、さらにAという情報はa1・a2・a3という要素で構成されている、といった関係を示すものがロジックツリーです。

ロジックツリー

情報を構造化する(ロジックツリーを作成する)には、トップダウンとボトムアップの2種類のアプローチがあります。トップダウンのアプローチとは、情報を全体から詳細に分解する、思考を発散させる方向の考え方です。一方のボトムアップのアプローチとは、個々の詳細要素に注目し、それらをグループにまとめる、思考を収束させる方向の考え方です。

情報を構造化して、その構造が最も論理的になるように最適な整理方法を見直す過程では、思考の発散と収束が自然と促されます。その過程の中で、漏れていた情報やノイズとなる余計な情報をあぶり出すことができ、それは検討対象についての理解の正確さや解像度を高める、ということにつながってきます。

ロジックツリーと似た手法として、思い付いたワードをつなげていく、マインドマップや連想ツリーと呼ばれる手法がありますが、これらとロジックツリーとは全くの別物だということにもご注意ください。ロジックツリーで情報を構造化する際には、上位情報と下位情報の間には論理的な関係を持たせることが重要です。そのためには、このトップダウンとボトムアップの両方のアプローチで繰り返し考えることがキーとなってきます。

ニーズとシーズの構造化

ニーズは、「~したい」というような上位の目的から「○○を○○する」といった詳細・具体的な課題にまでそのレベルが分かれます。また、シーズは、最終的な製品/サービスから個々の技術・ノウハウにまでそのレベルが分かれます。

そして、技術・ノウハウというシーズは、具体的な課題というニーズの直接的な解決手段となります。つまり、両者は情報の概念として、一番近い場所に位置付けることができます。

これらのことを踏まえると、ニーズとシーズに含まれる情報の概念は、下図のように並べることができる、ということがお分かりいただけるかと思います。

ニーズとシーズの構造・位置関係

そして、その内容を構造化すると、次のようなイメージとなります。

ニーズ・シーズの構造化(Solution Structure)

○○したい、という大目的に対して、それを実現するための課題がニーズとして構造化されます。そして、その課題を解決する技術やリソース・知見と言ったシーズがあって、それらを組み合わせることでプロダクト・製品/サービスができあがっている、ということを示すことができます。

このようにニーズ・シーズに含まれる各情報を構造化することで内容を詳細に整理し、全体像や情報同士の関係性を明確化したものを弊社ではSolution Structure*(ソリューションストラクチャー)と呼んでいます。
*Solution Structureはオモイエル株式会社の登録商標です。

このSolution Structureの思考法を用いることで、製品/サービスのニーズとシーズをつないでいくことが可能となるのです。

ニーズ・シーズを構造化して考えることの効果

ニーズ・シーズを構造化することは、その両者の概念を区別し、対象の製品/サービスについて客観的かつ俯瞰的に考えるきっかけになります。それにより、顧客寄りの思考(マーケットイン)と開発者寄りの思考(プロダクトアウト)の双方から検討をブラッシュアップする、コンセプトアウト型の企画開発が可能となります。

さらには、この考え方を用いた情報整理を行うことで、様々な効果を期待することができます。

まず、情報の前後関係を客観的に整理し、話に論理的な説得性を持たせられるようになります。つまり、何が本来の目的で何が手段なのか、ということをきちんと意識できるようになります。

さらには、検討の全体像に対する各情報の位置付けや優先順位が明確になるため、注目している事柄に対する背景の理解や、課題解決の重要度合いに対する認識を確認することも可能となります。

また、ニーズ・シーズの両方を考えることで、単純なアイデアを出すだけでなく、そのために用いる手段や解決策を組み合わせて考えることができる、というのもポイントです。これは、トップダウンで思考を発散させるだけでなく、ボトムアップで思考を収束させるからこそ、生まれる効果だと言えます。

また、情報をうまく整理できない、とう結果になるのも、ある意味成果だと言えます。整理がうまくできないということは、そこに対する自身の理解が曖昧だということが分かった、ということになります。つまり、理解が曖昧な部分や特に深掘りすべき課題を特定できるのです。それにより、その詳細を今後追及するべきだ、ということを確認できるようになるのです。

Solution Structureによる検討の目的と方向性

ここで、Solution Structureによる検討、すなわち、製品/サービスに関するニーズ・シーズの情報を可視化して整理することの目的や検討の方向性について確認しておきましょう。

Solution Structureの考え方は、様々な目的での分析に用いることができます。目的を体系的に整理しておくと、次のようになります。

1つ目は、ニーズを実現するための課題を整理するという、Solution Structureを左から右に考えていくアプローチです。つまり、お客様の要求を起点にして、それを実現するためにはどのような課題を解決していく必要があるのかという情報を具体化していく、という流れでの検討になります。

2つ目は、提供すべき価値や気付いていなかった課題を抽出していこうという、Solution Structureを左から右に考えるのに加えて上下方向に情報を増やしていくことを積極的に行うアプローチです。これは、ブレインストーミングのようにアイデアの幅を拡げていくといったことを重視する場合に有効です。

3つ目は、シーズの方に先に注目して検討をスタートする方法で、注目しているシーズがどのような課題を解決できるのかを整理するという、Solution Structureを右から左に考えていくアプローチになります。自社技術の新しい用途を探索する場合などは、この流れの検討を行うことがベースとなります。

そして、4つ目は、シーズに注目しながら上下方向に考えるというアプローチです。これは、自分たちが保有しているシーズを棚卸する際に有効です。自社が持っている知見やリソースを洗い出すためには、この領域の整理から始めることも多くあります。

どのような目的で分析や検討を進めたいのか、ということを意識することで、検討の最適な進め方は変わってきます。逆に言うと、検討の目的や狙いをきちんと意識して、検討の順番を十分に設計することが重要となってきます。

よくある質問で、ニーズとシーズのどちらから考えるのが良いですか、と聞かれることがありますが、それは目的やテーマに依ります。結局はどちらも考えないといけないので、一番やりやすいと思う順番を採用いただければ良いかと思います。

いずれにせよ、ニーズ・シーズの検討では、一方通行で終わらせるのではなく、上図で言うところの左右の方向と、それに加えて上下の方向にも行ったり来たりしながら、情報の全体像をより濃くしていく、ということが重要です。実際の企画開発では、Solution Structureを用いながらこれらの検討を順序立てて進めていき、都度内容を見直したり繰り返して考えたりしていくことになります。

そして、これを継続して行っていくことで、特に注目すべき課題の詳細や、その課題をどうやって解決するのか、ということを深掘りしていけるようになってくるのです。

今回ご紹介したような形で、情報を構造化すると、物事を深く考えることができるようになります。ぜひ、あなたの製品/サービスについても、ニーズとシーズを構造化し、新たな気づきを見出してみてください。

以下の記事では、情報の構造化に関連して「思考の可視化」という手法やツールのご紹介をしています。あわせてお読みいただけるとより理解が深まると思いますので、ぜひご確認ください。