多くのモノづくり企業では、”技術企画”という活動が行われています。技術企画とは、文字通りに捉えると「技術を企画すること」と言う意味になりますが、そのアプローチ方法には様々なパターンがあります。

また、特に大手・中堅の会社では、技術企画部という部門を設置しているケースが多く見られますが、その役割はいわゆる企画だけには収まらず、多岐にわたっています。

今回は、そのような”技術企画”の方法と”技術企画部”の役割について解説します。

技術企画とは

企業における技術企画とは、自社で今後取り組む技術開発のテーマを新たに構築することを一般的には指します。開発・改善の対象となる技術を見つけ、その具体的な開発方針を策定するのです。

企業が技術企画を行う目的は、新しい製品やソリューションを提供するためです。新しい製品やソリューションを実現するには、その中に用いる要素技術を開発・改善することが必要であり、その方針の大筋を検討することが技術企画の活動だと言えます。

このような技術企画には、大きくは次の2つの方法が考えられます。

  1. 対象とする技術を起点とする
  2. ターゲットとする市場領域を起点とする

A.対象とする技術を起点とした技術企画

こちらの方法は、自社にある特定の技術に対して、その新たな用途を考案する、「用途開拓」「用途仮説構築」「用途展開」「プロダクトアウト」「シーズアウト」などと呼ばれる検討のアプローチとなります。

対象とする技術は、新たな領域での新規展開が望まれる社内のコア技術(自社の強みとなっている技術)、または、過去に開発したものの活用先が思うように見つかっていない休眠技術が選定されることが一般的です。

これらの技術を用いて新たな開発テーマを構築するには、まず、その技術の特徴や過去の知見を洗い出すことが必要です。そして、必要な調査も交えながら、新たな展開の可能性がある領域に当たりをつけ、技術の用途案を抽出していきます。

この際、技術の用途案には、市場規模そのものが未知数でイノベーティブだと言えるアイデアや妄想段階の案から、単に自社がまだ手をつけていないだけで世の中としては顕在化されている市場を狙った案まで、幅広く考えることができます。後者を考えるのは、技術の販路開拓とも言え、技術企画ではなく技術的なマーケティングや営業の活動の中で行われるケースもあるでしょう。

B.ターゲットとする市場領域を起点とした技術企画

こちらの方法では、企画の対象とする技術を決める前に、ターゲットとする市場領域の方を先に決める、というアプローチです。

つまり、脱炭素・DX・生成AI活用などのような社会的に注目されている市場領域や、自社が特に興味を持っている市場領域をターゲットとして設定し、その中で自社の技術を用いて解決できそうな課題を探索していくのです。

これを行うには、社会全体の動向、国の政策、競合企業の取り組みなどを色々と調査し、その中にある技術的な課題や求められている取り組みを把握することが必要です。そして、そこに活用できそうな技術を自社で提供できる可能性があるかを判断していくことになります。これには、調査のスキルに加え、自社技術のラインナップについての豊富な知識も必要となります。

なお、ここで活用する技術には社内にあるものを選定することが一般的な技術企画の名目としては前提となりますが、同様な目的に対しては、社外の技術を取り込むことも想定は可能です。その場合は、新規事業やアクセラレーション(ベンチャー投資)と呼ばれる活動に近くなります。

開発テーマの構築に向けた技術企画の進め方

技術企画では、ご説明したA・Bどちらの方法をとるにしても、最終的には、対象とする技術とターゲット市場の両方を明確化しなくてはなりません。

そのためには、A・Bのどちらか一方のみで考えるのではなく、
「開発テーマの決定」=「対象とする技術の決定」×「ターゲットとする市場領域の決定」
として考え、対象とする技術とターゲット市場の両者の検討をバランスよく詳細化することが肝となります。それにより、より具体的に検討を進めることができるようになるのです。

両者の案が揃ったら、それは開発テーマの「仮説」となります。そして、更なる調査や有識者へのインタビューなどを通じてその仮説の確からしさを検証し、開発テーマとしての筋の良さの見極めや、実現に向けて解決が必要となる課題の精査を進めていきます。

技術企画のフェーズでは、以上のようなプロセスを経て開発テーマの方向性や大筋を決定し、具体的な開発に着手できるようにします。そして、技術企画の次の技術開発のフェーズで、技術の性能についての検討を深めたり、ターゲット市場をより詳細に絞り込んでいくことになります。

技術企画には、技術に関する知識に加え、課題分析・調査・アイデア発想などの様々なスキルが求められます。また、同じ会社の中でも、背景・分野・狙いなどによって技術企画の最適な進め方は変わってきます。

オモイエル株式会社は、多くの企業の技術企画を支援してきた実績がある会社です。自社の技術の展開方法に迷っている方や、興味ある市場はあるが何をすればよいか決められない、といった方は、ぜひ一度ご相談ください。

企業における技術企画部の役割

モノづくり系の業界では、技術企画の言葉を冠した”技術企画部”という部門を設置している企業が多くあります。ただし、企業の技術企画部は、先ほど説明した技術企画そのものの活動を行う以外に、その前後で必要となる役割も担っているケースが多く見受けられます。

後編では、そのような”技術企画部”の役割について詳細にご説明します。