以前、製品/サービスのコンセプトを考えるための基本は、「Why/何のために?」と「How/どうやって?」を繰り返し徹底的に考えることだというお話をしました。
今回は、この中でも特に意識的に行うことが重要となるWhyを考えることについて、その効果とポイントを詳しく解説します。
検討すべきことの全体像を認識できる
まず、「Why/何のために?」を考えるというのは、言い換えると、上位にある目的を考えることを指します。これには、検討すべきことの全体像を認識できる、という効果があります。
製品/サービスづくりの場面に限らず、現状の課題を明確化したい時は、根底にあるそもそもの目的を確認することが重要です。Whyすなわち上位目的を考えれば、注意が枝葉の話にばかり奪われてしまうことを避け、本来検討すべきことの全体像を抑えることが可能となります。

検討すべきことの全体像をきちんと認識できると、注目する詳細部分についても、その位置づけを再確認できます。それにより、現時点での理解の深さや、より深く考えることの必要性を判断できるようにもなるのです。
目的を再定義できる
Whyを繰り返し考えることは、新しい問いを立てることにもつながってきます。つまり、現時点で分かっている情報を確認するだけではなく、「何を考えるべきか」ということを改めて考え、検討の中身を再構築できるのです。
これは、クリティカルシンキングを実践するために求められるマインドの一つにもなります。
前節では目的を確認するという話をしましたが、確認するだけではなく、目的をつくる(再定義する)という意識も持ってみてください。目的を再定義できると、製品/サービスの価値も再定義できます。
例えば、「玄関を自動で施錠する」という技術について、whyを考えてみましょう。

もともと考えていた目的は「玄関の施錠忘れを防止する」だったとしても、見方を変えると、「帰宅時に手がふさがっている状態でも玄関を施錠する」こともできる、ということに気付きます。そうすると、この製品は「玄関の施錠のうっかり忘れを防止する」ものなのか、「楽に玄関を施錠できる」ものなのか、といったように、製品としての在り方や魅せ方についての検討の幅が拡がります。
このように、whyを考えて目的を再定義すると、製品/サービスの価値をどのように解釈するべきかも再考できます。もちろん、明確な答えが最初からある訳では無いかもしれません。しかし、この行為を通じて、より本質として捉えるべきポイントは何か、ということを視野を拡げて考えるきっかけが生まれてくるのです。
採用すべき手段を理由とともに明確化できる
Whyを考えると目的に立ち返ることができるので、その結果、同じ目的を達成するための別の手段に気付くことができるようにもなります。
例えば、「電動ドリルを使う」ということを検討している時、そのwhyを考えると、「板に穴を空ける」という目的に立ち返り、それなら千枚通し(キリ)を使うのでも良いのではないか、ということに気付きます。Whyを考えることで、もともと考えていたものとは異なる手段に目を向けることができるのです。
そして、もう一点、ここで言及しておきたいのは、目的を生み出すという意識で考えると、その手段を採用すべき理由を意識的に訴求できるようにもなる、ということです。
電動ドリルメーカーのように、何が何でも電動ドリルを使わないといけない(使わせないといけない)シチュエーションを想定してみましょう。そのような時は、whyを他にも考えて、「板に穴を空ける」以外に「力が要らない」という目的・課題もあるので、千枚通しではなく電動ドリルでないとダメなんです、というような説明を生み出すことが必要です。「力が要らない」という新しいwhyを設定することで、電動ドリルでなければならない理由を明確にすることができるのです。

同様に、「板に穴を空ける」のは「板にネジを通す」ためで、それは「板を固定する」ためです。そうするとまず、電動ドリル以外にも粘着テープや接着剤といった他の手段があることに気付くことができます。しかし、さらにwhyを考えて、板を固定するのは「本棚をつくりたい」からで、しかも、「重い本をたくさん乗せても壊れない」本棚をつくりたいのだ、ということを確認できれば、「板を”強く”固定する」ことが重要で、そのためにはネジを用いるのがベストだから、やはり電動ドリルが最適解だ、というように話の説得性を高めることができます。

このように、whyを考えることは、目的と手段を客観的に見直すことにも役立ちますし、自分が使いたいと思っている手段についての意味づけをして、なぜその手段がベストだと言えるのか、ということを明確にすることにも役立ちます。つまり、採用すべき手段を理由とともに明確化できるのです。
ある意味では恣意的だったりこじつけただったりしても構わないので、まずは自分たちの技術の強みや特徴を顧客に訴えかけられるようなwhyに変換できないか、ということをぜひ考えてみてください。
まとめ
今回は、製品/サービスづくりの中でwhyを考えることの効果について詳しくご説明しました。Whyを考えると、以下の効果を期待することができます。
- 検討すべきことの全体像を認識できる
- 目的を再定義できる
- 採用すべき手段を理由とともに明確化できる
ぜひ、あなたもご自身の製品/サービスについての「Why/何のために?」を意識し、その在り方を確認・再考してみてください。