自身が手掛ける製品/サービスの方向性や課題について考える際、一人で考え込むのではなく、誰かと対話することが有効なことがあります。

対話には、

  • 自分の考えを誰かに話すことで、うまく伝わる説明方法を主体的に考えることができる。
  • 自分と異なる視点を参照でき、新たな気づきが得られる。
  • 会話のラリーを通じてキーワードが自然と出てくるようになり、検討が膨らむ。

といった効果があります。そのため、対話を通じて、自身の頭の中を整理したり視野を拡げたりすることができます。

そして、製品/サービスを手掛ける経営者や企画開発の責任者には、対話を用いた「壁打ち」の機会を持つことが重要です。今回は、有効な壁打ちを実践するための心得と課題についてお話します。

壁打ちとは

壁を相手にボールを打つテニスなどの自主練習になぞらえて、ビジネスの世界では、自身の考えを対話相手に話し、返ってきた言葉や反応をもとに改めて考えを整理する、というのを繰り返すことを壁打ちと呼びます。

相談と壁打ちとは、似て非なるものです。相談とは、困り事に対する具体的な情報や直接的な解決策を教えてもらう行為です。一方、壁打ちとは、相手からのフィードバックを参考にしながら自分自身の考えを整理し、深める行為です。相談と壁打ちのいずれにも対話は発生しますが、上記の違いから、壁打ちにはより質の高い対話が求められます。

壁打ちにおけるポイントは、対話相手には知識ではなく意見を求めることです。そして、相手の意見を参考にしつつ頭の中の情報を整理し、次に何をすべきかを明確にすることがゴールとなります。

製品/サービスの企画開発において、壁打ちは以下のような場面で有効となります。
※企画開発者でない人も、自身の業務が自社やステークホルダーを顧客としたサービスだと考えていただければ、同様の効果を期待できます。

  • 現状の思考の枠を外し、今後の課題や改善点を探索したいとき
  • 今後やってみたいことのアイデアや解決すべき課題が沢山あり過ぎて、情報を整理しきれていないとき
  • 自身の考えを客観的に見直したいとき

壁打ちは、自身の考えを自らの力で発展させようという意思のある人が用いると効果を発揮する手法だと言えます。誰かに壁打ちをお願いする際には、受け身にならず、相手の意見の中身を自身でかみ砕き、意見を打ち返す姿勢を持つことが重要です。また、壁打ち相手にも同様な素養が求められます。

壁打ちの課題

壁打ちでは、効果的・効率的に思考を整理し、深めることが望まれます。そのためには、検討すべきことの全体像と話題の視点を自身と対話相手の双方で共有し、意図的にコントロールすることが最大の課題となります。

つまり、壁打ちでは、対話の場に出てくる情報を整理する力が非常に重要となります。情報を整理しないまま対話を進めても、逆に頭が混乱したり、何を話しているのかを見失ったりすることになるのです。

情報を整理するための基本的な方法は「構造化」です。詳しい説明はこちらをご覧ください。

対話をしていると、視野や思考が拡がったりアイデアが膨らんだりする場面が生じます。これは、思考を発散させる方向で頭が働いています。一方で、話の全体像を客観的に整理したり、その中で注目する課題を特定したりするためには、思考を収束させる方向で頭を働かせることが求められます。

この思考の発散と収束をごちゃ混ぜにしてしまうと、対話が闇雲に進んでしまい、次に何をすべきか、という結論までを得ることは難しくなります。しかし、情報を構造化すると、思考の発散と収束を意識し、うまく使い分けられるようになります。

壁打ちでは、対話の場に出てきた情報を構造化し、それを双方で共有しながら、話の流れや方向性に対する認識をお互いに確認できると効果的です。この点については、こちらの記事で詳しく解説しています。

壁打ち相手に求めるべき要件

壁打ちは、自身で物事を主体的に考えることが基本となりますが、同時に、壁打ち相手に「壁」として機能してもらうことも求められます。壁打ち相手が適切でない場合、壁打ちの効果は半減してしまいます。

壁打ち相手には、前提となる知識にギャップが無い(もしくはすぐにキャッチアップできる)ことと、同じ熱量や目線の高さで対話できることが求められます。立場が対等である必要はありませんが、お互いに何でも話せる関係でなくてはなりません。

そして、壁打ち相手には、自身の意見やアドバイスを提供しつつも、それを無理に相手に押し付けない姿勢が必要となります。特定分野についての知識や経験が豊富にある人の中には、直接的な答えやアイデアを提供することを急ぐ人もいます。しかし、壁打ち相手として求められるのは、そのようなことではなく、適切な問いかけにより、あなたの考えの活性化を促すことです。壁打ち相手は、あなたの話をしっかりと聞き、そのうえで良い問いかけを投げかけてくれる人であることが重要です。

また、壁打ち相手によっては、対話の場に出た情報を整理する役割を積極的に担ってくれる人もいます。壁打ちでは自身が考えることが重要である、ということに変わりはありませんが、情報整理の全てを自身だけで行う必要はありません。極端に言えば、壁打ち相手に情報の整理を任せ、その結果に自身が違和感を感じず、十分に納得できれば、問題は無いのです。

コンサルティングやコーチングのサービスを提供している人との壁打ちでは、対話相手になってもらうだけでなく、そのような情報整理を積極的にサポートしてもらうことも期待できます(もちろん、相手によって能力はまちまちですが)。理想的な壁打ち相手とは、あなたに寄り添った形で情報の整理を積極的にサポートしてくれ、さらには筋の良い結論に辿り着けるよう対話の方向を導いてくれる人だと言えます。

オモイエルが提案する壁打ちの方法

オモイエルは、製品/サービスを手掛ける経営者や責任者(製品/サービスについて十分な知識を持ち、かつ、自分で意思決定を行える人)の対話相手となる「壁打ちサービス」を提供しています。

対話と情報整理のスペシャリストが独自の手法を用いて、あなたの製品/サービスに対する思考と想いの明確化をサポートします。コンサル要素とコーチング要素をハイブリッドしたサービスで、一般的な経営相談やVCによるメンタリングとは異なり、取り組みに対するやりがい・納得感・自己肯定感などについて対話できる点も特徴です。本記事を読んで壁打ちにさらに興味をお持ちになった方は、ぜひ一度話を聞いてみてください。

一人だけでも壁打ちはできる?

壁打ちがしたいと思っても、自身にマッチする壁打ち相手がすぐに見つからない場合や、恥ずかしい・自信が無いなどの事情で他者に壁打ちをお願いすることに抵抗を感じる場合もあるかと思います。

そのように一人だけで思考の整理に取り組む必要がある時には、考えられる方法が二つあります。

一つ目は、人ではなくAIに壁打ち相手になってもらう、という方法です。最近は、ChatGPTなどの生成AIの品質が向上しており、うまく使うことができれば、壁打ち相手として活用することも可能かもしれません。ただし、AIが相手では、背景の深い理解や温度感の共有が難しかったり、情報の整理までは期待できなかったりするのが現状かと思います。

もう一つの方法は、誰かではなく自分自身と対話する、という方法です。目の前にもう一人の自分がいると想定し、頭の中で様々な問いかけを繰り返すのです。これは、セルフコーチングと呼ばれます。

セルフコーチングで壁打ち相手となる自分は、より客観的・俯瞰的な立場に立っている自分や、過去・将来にいる自分を想像すると効果的です。つまり、自身の頭の中を振り返る方法として用いると特に有効と言えます。

オモイエルは、製品/サービスの企画開発の領域で、通常の壁打ちサービスをご提供する以外に、セルフコーチングの能力を磨くこともご支援しています。「プロダクトリフレクション研修」は製品/サービスの企画開発における考え抜く力と納得感を向上させられる動画講座です。情報整理の具体的な方法や、対話のテクニックについての解説もしており、セルフコーチングを実践したい人にぴったりの研修となっています。また、壁打ち相手として誰かの為になりたいという人にもお勧めの内容です。ぜひ以下より詳細をご確認ください。