以前、製品/サービスについての検討や分析を行うには、「機能」を考えることが有効だというお話をしました。

今回は、「機能」を用いた考え方を実践するにあたって覚えておくべきポイントをご説明します。具体的には、機能の表現方法について詳しく解説します。

機能の表現方法①:S・V・Oを考える

機能とは、「システムの中で担う固有の働き」と定義することができます。製品/サービスに含まれるシーズには、その製品/サービスというシステムの中で、何かしらの役割、すなわち固有の働きを担っています。それが、そのシーズの機能です。

機能を表現するには、英語の文法にあたるS・V・Oを意識することが基本となります。主語(S)が何か、を意識しながら、「○○を○○する」といったように、動詞(V)と目的語(O)を表現してみてください。

例えば、「ドリル」についてのS・V・Oを考えてみましょう。この場合のS・V・Oは、ドリル・開ける・穴となります。つまり、ドリルは「穴を開ける」という機能を持っている、と表現することができるのです。

同様な考え方をすると、「眼鏡」の機能は「人の視力を補う」、「電気ポット」の機能は「水を沸騰させる」、「電車」の機能は「人・モノを移動させる」、「インフルエンサー」の機能は「情報を発信する」といったように表現できるとお分かりいただけるかと思います。もちろん、唯一の正解となる文言があるわけではないので、ケースに応じて最適な文言を選ぶようにしてください。

機能は、一つのシーズに複数存在する場合もあります。例えば、紙には、「文字を記録する」という機能もあれば、「モノを包む」という機能や「液体をふき取る」といった機能もあります。機能は1つだけに限る必要は無いということにもご注意ください。

機能の表現方法②:インプットをアウトプットに変える働きとして捉える

機能を表現する他の方法として、インプット(入力情報)をアウトプット(出力情報)に変える働きとして機能を捉える、という考え方もあります。

例えば、ドリルは、「浅い穴」というインプットを「深い穴」というアウトプットに変える、という働きを持っていると言えます。したがって、ドリルの機能は、「浅い穴を深い穴に変える」と表現しても問題はありません。同様な考え方をすると、眼鏡は「見えない状態を見える状態に変える」、電気ポットは「水を湯に変える」といった表現方法になってきます。

機能を表現するには、このような形でインプット・アウトプットに注目する方が分かりやすい場合もあります。先ほど説明したS・V・Oで考えてもV(動詞)やO(目的語)を明確に言語化しづらい時には、インプットとアウトプットが何か、ということを考え、上記のような表現を用いてみると良いでしょう。

なお、ドリルの「浅い穴を深い穴に変える」という機能は、もう少し噛み砕くと、「浅い穴を深くする」という表現に落とし込むこともできます。結果的に、インプットに当たる情報が先ほどのO(目的語)に相当してくることになります。

機能には必ず目的が存在する

機能を表現する際、「電車は走る」といったように、SとVの情報のみが思い浮ぶ時があります。そのような時は、もう少し深く考えることが必要です。

最初に説明したように、機能とは働きのことなので、必ず目的が存在します。そのため、目的語を伴わない動詞(自動詞)を用いることは避ける方が好ましいと言えます。

先ほどの電車の例の場合だと、「走る」という動詞のみの情報でも、言っていることは間違いではありませんが、だから何?という問いが生まれてしまいます。そうならないためには、電車が何のために走るのか、ということを踏み込んで考えることが必要となってきます。そうすると、電車の機能は「走る」ではなく、「人・モノを移動させる」という、目的に沿った表現に変わります。機能を表現する際は、このように目的に注目した考え方をすることが重要なポイントとなります。

また、 機能を表現したい際に、「軽い」や「速い」のように、動詞ではなく「○○である」という形容詞の情報が思い浮かぶ時もあります。そのような時も、もう少し深く考えることができるはずです。

繰り返しになりますが、機能には必ず目的が存在します。そのため、目的語の無い形容詞の情報は、機能ではなく、機能を果たすための「特徴」だと区別するようにしてください。

例えば、「ナイロン素材が軽い」という情報があったとしましょう。このようなケースでも、それが何のためか、という目的を遡って考えることがポイントとなります。

そうすると、「衣服の重さを軽減する」という目的と機能が前提にあって、そのためにナイロン素材には「軽い」という特徴がある、というように考えるのが適切だということがお分かりいただけるかと思います。このような考え方をすると、求められている本質的な目的とシーズの特徴を区別して考えることができるようにもなります。

「機能」と「性能」は区別する

機能に何かしらの優位性がある場合には、「どんな風に」といった副詞にあたる情報を加えるのがお勧めです。

例えば、「穴を”高速で”開ける」、「人・モノを”長距離”移動させる」、「情報を”日常的に”発信する」、といったように、機能の表現の中に補足となる副詞の情報を加えると、その機能の程度や方向性を示すことができるようになります。つまり、性能についても言及できるようになるのです。

機能と性能はよく似た言葉ですが、両者は別物であるということにご注意ください。機能は本質的な働きそのものを意味する言葉であるのに対して、性能は、その機能の程度を示すための指標を意味する言葉です。性能とは、機能を測定できる形や数値化された形などで表現したものだと考えてください。

例えば、「耐熱性が必要だ」とか「信頼性を上げたい」といった表現を我々は日常的に用いていますが、これは性能の話です。より本質的な議論をするには、「高温化で物性を維持する」とか「安定した動作を実現する」というように、性能ではなく求めている機能の方を明確化しながら議論することが必要です。

製品/サービスの提供価値や開発課題を考える際には、性能ではなく、より本質的な機能についてまずは考える癖を持つようにしてください。そのうえで、競合に対する優位性を議論すべき段階になってから、性能、つまり機能に関する副詞の部分にも焦点を当てていくのがお勧めです。

最後に

今回は、機能の表現方法についてご説明しました。ご紹介したポイントを意識していただくと、製品/サービスやその中に含まれるシーズの役割をより本質的に捉えることができるようになるかと思います。機能の表現方法を考える過程を通じて色々な気づきが生まれてくるはずなので、ぜひ今回の話をヒントとして、あなたの製品/サービスの中身も振り返ってみてください。

以下の記事では、機能を考えることの具体的な効果についてご紹介しています。併せてお読みいただくと、より検討の効果が高まるかと思います。