以前、製品/サービスについての検討や分析を行うには、ニーズとシーズをつなぐ「機能」を考えることが有効だというお話をしました。

今回は、機能を考えることで得られるメリットを3つ具体的に取り上げ、ご説明します。

機能を考えるメリット①:メカニズムを解き明かせる

機能を考えると、物事の詳細なメカニズム(原理・からくり)を明確化することができます。

例として、ドライヤーのメカニズムについて考えてみましょう。ドライヤーは、「濡れた髪を乾かしたい」というニーズに対して、「温風を発生させる」という機能を提供しています。そして、それは「冷風を発生させる」という機能と「冷風を温風に変える」という機能の組み合わせで実現されています。また、「冷風を発生させる」という機能は、「吸入口が空気を吸入する」という機能と「ファンが空気を押し出す」という機能で実現され、さらには、「ファンが空気を押し出す」という機能は、「ファンを回転させる」という機能と「モータに電気を流す」という機能により実現されています。

このように、機能を考えると、物事のメカニズム(原理・からくり)を体系的に整理することができます。関係する機能を抽出し、言語化することで、複雑な事象やブラックボックス化されている情報の構造を解き明かすことができるのです。

これができると、顧客のニーズを満たす方法の設計や、そもそものニーズの設定についての検討も容易になります。ニーズの実現メカニズムが明確になることで、改善すべき機能、追加できる機能、不要な機能などを、その影響とともに詳細かつ網羅的に見直すことが可能となるのです。

機能を考えるメリット②:目的に立ち返り、他の解決策に気付ける

機能を考えると、目的に立ち返り、他の解決策に気付くこともできます。

例えば、「山火事などの広域な火災現場で、安全のために救助隊にGPS機器を持たせたい」といった課題に対して、「GPS機器を耐火性のケースに入れよう」と考えている場面を考えてみましょう。

この時、どのような耐火性のケースを使用するか、という話を進める前に、検討の中に含まれている機能を一度考えてみることが有効となります。

まず、何のために耐火性のケースが欲しいのかを考えると、「GPS機器を炎から保護する」という機能が必要であるからだ、ということに気付きます。そうすると、耐火性のケース以外にも他の手段がないか、ということを考え、「GPS機器に耐火性のコーティングをする」といった新しいアイデアが出てくるようになります。

さらに、そもそもの目的を機能で考えることもできます。そうすると、本当に求めているのは「救助隊の位置を特定する」という機能であり、それであれば、「ドローンを用いて救助隊の位置を観測する」などの手段を検討可能であることに気付けます。

このように、機能を考え、それを課題として捉えると、本来の目的を見失うことなく、課題の解決手段についての検討の幅を拡げることができるようになります。

機能を考えるメリット③:技術に対する理解を促進できる

機能を考えることには、技術の中身を分かりやすく表現し、その技術に対する理解を促進できる、というメリットもあります。

例えば、「脳波計測技術」という技術があるとします。この技術の名前を聞いただけで色々な議論ができる人は、技術に対する知識が十分にある人だけです。この技術を世の中に売り込もうと思っても、「脳波計測技術を持っています」と発信しただけでは、日頃から近い領域の分野に携わっている人にしか興味は持ってもらえません。

では、「眠くなるタイミングを検知できます」というように、この技術の機能を発信するとどうでしょうか。この技術により何ができるのかが分かりやすくなったので、先ほどよりも多くの人が興味を持ってくれる可能性が高まります。さらには、「眠くなるタイミングを検知する」という機能があるなら、「ストレスをチェックしたい」とか「不眠症を解決したい」といった悩みにつなげられそうだ、と用途について考えることも容易になります。

自社の技術を外部に説明する際、その内容が自分にとっては当たり前すぎて、機能を意外と言語化できていない、ということはないでしょうか。誰かと技術的な議論をする際には、“分かる人にしか分からない”という状態にせず、技術の機能について説明を落とし込み、その価値や強み・特徴を伝えることを意識してみてください。きっと、相手の理解が追いつき、より有益な対話を増やすことができるはずです。また、自身にとっても、その技術の本質的な役割を再認識するきっかけになるはずです。

最後に

今回は、機能を考えることで得られる3つのメリットをご紹介しました。機能を考えると、製品/サービスに関するニーズ・シーズの内容をより詳細かつ正確に理解できるようになります。ぜひ、あなたの製品/サービスづくりの中にも同様な考え方を取り入れ、検討の精度を高めることにお役立てください。