製品/サービスには、明確なコンセプトが求められます。また、継続的な製品/サービスづくりにおいては、コンセプトは、常に見直し、ブラッシュアップされ続けていくべきものです。そのために重要になってくるのが、製品/サービスについて内省(reflection、リフレクション)することです。
内省とは、自分自身の頭の中をしっかりと振り返って、将来に向けた気づきを見出すことです。
製品/サービスを継続的に進化させていくためには、製品/サービスについて内省をしておくことが必要です。これが十分にできていないまま、新しいことを始めようとしても、何が新しいのかが不明確だったり、何度も同じことを考えて時間を無駄にしてしまったりします。
オモイエルでは、製品/サービスについて内省することをプロダクトリフレクションと呼んでいます。今回は、プロダクトリフレクションを効果的に実践するためのポイントをご紹介したいと思います。
ポイント1:現状のプロダクトのコンセプトを確認する
1つ目のポイントは、とにもかくにも、まずは現状のコンセプトをしっかりと確認することです。
製品/サービスのコンセプトとは、「誰がどうなるか」「何を用いるか」「強み・特徴は何か」という3つの要素で構成されます。したがって、この1つ目のポイントは、細かくすると、さらに3つに分かれます。
※コンセプトの3要素については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ポイント1-1:「誰がどうなるか」を確認する
「誰がどうなるか」という情報は、顧客のニーズ(目的・課題)に相当します。プロダクトリフレクションでは、想定するニーズを明確に定義し、それを解決することの意義や重要性をきちんと説明できるようになることが重要です。
製品/サービスの目指すべき姿は、顧客のニーズにあわせて変わります。また、ニーズには、顧客自身ですらその存在に気付いていない類のものもあります。
プロダクトリフレクションでは、
「誰が何をしたいのか?」
「それができるとなぜ良いのか?」
「具体的な困りごとは何か?」
といったことを自身に問いかけ、ニーズの全体像を詳細かつ精度よく確認することが求められます。
ポイント1-2:「何を用いるか」を確認する
「何を用いるか」という情報は、製品/サービスを通じて顧客に提供するシーズ(モノ・技術・ノウハウ)に相当します。
プロダクトリフレクションでは、活用しているシーズを洗い出すことがまず必要です。そして、さらには、その内容を分かりやすく説明できるかを確認することも重要です。
顧客の中には専門用語を理解していない人もいます。そして、理解できないものに興味は示してくれません。シーズがどんなに優れたものであっても、単にそれを紹介するだけでは、必要性を感じてくれない顧客も多いはずです。
シーズの説明内容を整理するには、
「それは何の役に立つのか?」
「何ができるのか?」
「どんな効果があるのか?」
といったことを自身に問いかけることが有効です。
あなたも、シーズの内容を専門知識の十分でない相手(極端に言えば小学生)にでも理解できるレベルで分かりやすく説明できているか、一度考えてみてください。これができると、製品/サービスのアピールすべき本質的な価値や最適な用途に対する思考も自然と拡がってきます。
ポイント1-3:「強み・特徴は何か」を確認する
製品/サービスには、「強み・特徴は何か」という情報も求められます。
既に他社の製品/サービスを導入している顧客は、あなたの製品/サービスに乗り換えることを積極的には検討してくれません。そのような顧客を動かすには、差別化要素、すなわち、製品/サービスの強み・特徴を明確化し、その有効性や必要性に納得してもらう過程が必要なのです。
プロダクトリフレクションでは、
「ニーズに対する独自の目線があるか?」
「シーズの性能が十分に高いか?」
「他社の真似できないアイデアが含まれているか?」
といったようなことを確認しながら、ニーズ・シーズの少なくともいずれか一方に強み・特徴を見出すことが有効です。
もし、今の時点で強み・特徴が思い当たらなくても安心してください。ニーズやシーズを詳細に整理していく中で、きっと見つかります。
ポイント1 まとめ
製品/サービスについての内省(プロダクトリフレクション)で求められる最初のポイントは、現状のコンセプトを確認することであり、そのためには、お伝えした「誰がどうなるか」「何を用いるか」「強み・特徴は何か」という3点を確認することが必要です。あなたはこれらの情報を十分かつ的確に理解できているでしょうか。

これらの情報を確認するというのは、その製品/サービスに関するニーズ・シーズの全体像や関係性を見直す、ということでもあります。まずは、ニーズ・シーズの中身を詳細に整理し、あなたの製品/サービスのコンセプトについて改めて考えてみてください。
ポイント2:コンセプトを実現するための課題を具体化する
コンセプトを確認した後、プロダクトリフレクションで次にポイントとなるのが、そのコンセプトを実現できることをきちんと示す、ということです。
製品/サービスの企画開発を前に進めるためには、「できたらいいな」で思考を止めず、「どうすればできるだろうか」というところまでをきちんと考えることが重要です。そのためには、コンセプトを本当に実現できるのかをシビアに考え、実現するための課題に向き合わなくてはなりません。そのためには、課題を具体化することが必要です。
課題を具体化するには、ニーズとシーズのつながりを詳細に確認することが有効となります。

ニーズ側から見て、
「必要なシーズは揃っているか?」
「なぜそのシーズを用いるのが良いのか?」
シーズ側から見て、
「想定しているニーズは本当に妥当か?」
「なぜそのニーズなのか?」
これらのことを考え、ニーズとシーズのつながりを明確化してみましょう。もし、つながりの曖昧な部分が出てきたら、それは現状で検討の不足していた、未解決の課題だと言えます。
課題が具体的になれば、その解決のためのアプローチを考えたり調べたりすることも容易になってきます。もし、これがうまくできないなら、対象とするニーズ・シーズを見直し、コンセプトの方を考え直すべきだと言えるでしょう。
念のため補足しますが、課題が見つかること自体は悪いことではありません。ただし、課題を放置してしまうと、コンセプトはいつまで経っても実現されず、空想や夢物語で終わってしまいます。
ポイント3:コンセプトの中にある“らしさ”を見出す
プロダクトリフレクションにはもう1つ、特に製品/サービスを考え出した経営者や責任者にとって重要となるポイントがあります。それは、コンセプトの中にある“らしさ”を見出す、ということです。
ここで言う”らしさ”とは、製品/サービスの提供者が持つ本来の興味・やりたいことや、無理なくできる得意なことだと考えてください。
製品/サービスづくりを前向きな気持ちで進めるためには、”らしさ”を見出すことが重要です。”らしさ”を明確にすることで、製品/サービスの強みや特徴はさらにブラッシュアップされ、さらには、企画開発者がストレスなく、モチベーション高く、仕事に向き合えるようになってきます。逆に、”らしさ”を見出せないと、その製品/サービスを自分たちが手掛けることの意義が薄まってしまいます。
企業やあなた個人は、必ず、何かしらの”らしさ”を持っています。”らしさ”は、企画開発者の根底にある想いから生まれます。あなたも、なぜそれをやるのか?という自身の想いをニーズ・シーズに照らし合わせ、本当にやりたいこと(Will)や無理なくできること(Can)が製品/サービスのニーズ・シーズに十分含まれているかを確認してみてください。それにより、企画開発に取り組むあなた自身にとっての意味を見出すことができるはずです。

製品/サービスのニーズとシーズを客観的に考えることはもちろん重要ですが、そこに”らしさ”が存在しているかを確認することも同じくらい重要だと言えます。
本記事をご覧の方の中には、大企業にお勤めの方など、個人的な想いとは別で、会社から指示されてその製品/サービスをたまたま担当しているだけ、という方もいらっしゃるかと思います。その場合は、自社のビジョンやコア技術を”らしさ”として、上記のことを考えることになります。
しかし、せっかくなので、それだけではなく、ご自身の個人的な興味ややりたいこと・できることを担当の製品/サービスに含めることができないか、というのもぜひ一度考えてみてください。それにより業務への意味づけがされ、視野やモチベーションが変わってくるのではないかと思います。
コンセプトのチューニング
この”らしさ”を見出すというプロダクトリフレクションのポイントに関しては、客観的な論理思考よりも主観や熱意が求められてきます。
その中で発生しがちなのが、「売上・利益」と「やりたいことをやれること」のどちらが自分にとって重要か、というジレンマです。創業初期のベンチャーなどでは、売上・利益を獲りに行くのか、自身の本当にやりたいことをやるのか、のトレードオフで悩まれるケースが多くあるかと思います。想いを持って製品/サービスを考案した人にとって、それを世の中に展開する目的は、売上の追求のみだとは限りません。
そのようなケースで悩んでいる時は、「売上の最大化を狙ったコンセプト」と「自身の想いに対して正直なコンセプト」の間でコンセプトをチューニングすることを考えてみてください。製品/サービスづくりで迷走しないためには、両者のバランスをどこに定めるのかを決めておくことが必要です。

そのためには、絶対に譲れないことは何か、ということと、逆に、どこまでなら譲っても良いか、ということをしっかり確認することが求められます。これにより、ビジネスとして現実的な方向性を探索しつつも、自分にとっての腹落ちや納得感に正直に向き合うことができるようになってくるのです。
最後に
今回は、製品/サービスについて内省する、プロダクトリフレクションのポイントをご紹介しました。ご紹介したポイントを意識しながら、あなたも製品/サービスのコンセプトをつくり、ブラッシュアップをしてみてください。
なお、これを精度よく行うには、製品/サービスに関するニーズ・シーズについて、現状よりも一歩踏み込んでさらに深く考え、理解の解像度を上げていこう、という心構えが求められます。そのための基本的な方法としては、WhyとHowを考えながらニーズ・シーズについての思考を可視化してみることがお勧めです。

詳しくはこちらの記事で解説していますので、あわせてご覧ください。