製品/サービスの企画開発でまず必要となること、それは、コンセプトを明確にすることです。この記事では、製品/サービスづくりのベースとなる「コンセプト」について解説します。

なお、ここでいう製品/サービスというのは、有形/無形を問いません。専門家ビジネスの場合は、専門家自身が製品/サービスだと捉えていただければと思います。

そもそもコンセプトとは何か

コンセプトとは、日本語にすると、思想・方針・在り方、といった意味で捉えていただくと分かりやすいかと思います。つまり、コンセプトを明確にするというのは、揺るぎなく一貫した思想・方針・在り方をつくる、と言う意味になります。

製品/サービスとは、お客様に価値を提供するために買ってもらうものです。したがって、製品/サービスのコンセプトを明確にする、というのは、すなわち、お客様に価値を提供するために買ってもらうものに、揺ぎなく一貫した思想・方針・在り方をつくる、ということだと考えてください。

コンセプトを明確にすることは、製品/サービスの企画開発を前に進めていくうえで、とにかく最初に必要となる事柄になります。コンセプトがあやふやなままだと、何から手を付けたら良いかを決められなかったり、自信を持ってその内容を周囲に説明したりすることが難しい、というのはご理解いただけるかと思います。逆に、コンセプトが十分に明確であれば、今後の進むべき方向は自ずと明らかになってきます。

新規事業や企画開発系の仕事をする人のよくある悩みには次にようなものがあります。

  • やりたいことのアイデアはあるが、何から手を着けたらよいか決められない・・・
  • 売り込みたい技術は持っているが、顧客に受け入れられるか自信が無い・・・
  • 考えている製品/サービスの全体像を周囲に説明したいが、うまく伝わらない・・・

これらは本当にどの企業の現場にもあるお悩みで、よくあるお悩みTop3と言ってもいいのではないかと思います。 これらの悩みを解決し、前に進むために重要となるのが「コンセプト」なのです。

製品/サービスと顧客の関係

製品/サービスと顧客の関係は、下図のように描くことができます。

顧客と製品/サービスの関係

顧客は製品/サービスを購入して手に入れるわけですが、本当にやりたいこと・求めていることは、自身の目的を達成することです。

つまり、製品/サービスというのはあくまでも「手段」であり、それを通じて本当に「目的」を達成できるのかが顧客が持つ真の興味の対象となります。そのため、顧客は、製品/サービスを購入する前に、自身の目的に対する手段の有効性の評価を行います。その際に確認するものがコンセプトなのです。

製品/サービスを購入する前の顧客は基本的にその製品/サービスを自由に利用することはできません。したがって、その良し悪しを判断するためには、実際のものではなく、コンセプトの方を参照することになります。

このような関係を考えると、製品/サービスが売れるためには、そのコンセプトが顧客にとって共感・納得できる内容になっていることが、とても重要だということがお分かりいただけたかと思います。

製品/サービスを表すコンセプトの3要素

顧客と製品/サービスの関係性に照らし合わせて考えると、製品/サービスのコンセプトの情報は、3つの要素が必要なことがお分かりいただけるかと思います。

製品/サービスのコンセプトの3要素

顧客が自身の目的を達成できるのか、ということで「誰がどうなるか」、言い換えると「何をできるようになるか」という点が情報として必要になります。そして、そのための手段として「何を用いるか」という情報も必要になります。さらには、その手段の有効性を評価するという点で、「強みや特徴は何か」という情報も必要です。

この「誰がどうなるか」「何を用いるか」「強みや特徴は何か」という3点が、製品やサービスを表すコンセプトの3要素となってきます。

誰がどうなるか(何をできるようになるか)

製品/サービスのコンセプトをつくるには、想定する顧客と困りごと、すなわち、「誰がどうなるか(何をできるようになるか)」という情報が必要です。顧客に興味を持ってもらうためには、製品/サービスが誰のためのものなのか、何のために用いられるべきものなのか、といったことをまず理解してもらわなくてはなりません。

何を用いるか

製品/サービスのコンセプトをつくるには、「何を用いるか」についての十分な検討も必要です。製品/サービスの中で活用する技術やリソースの調達や完成度が十分でなければ、顧客を満足させることができません。

また、「何を用いるか」を顧客に分かりやすく説明できることも重要です。顧客の中には専門用語を理解していない人も多くいます。そして、理解できないものに興味は示してくれません。

強みや特徴は何か

製品/サービスのコンセプトの中には、「強みや特徴は何か」という情報を盛り込むことも必要です。顧客は、製品/サービスの有効性を評価する際に、他社の製品/サービスとの比較を行います。自社の製品/サービスの優位性を保つためには、製品/サービスに何かしらの強みや特徴がなくてはならないのです。

コンセプト ≠ キャッチコピー

ちなみに、コンセプトと似た言葉で、キャッチコピーというものがありますが、これはコンセプトとは異なります。世の中には、コンセプトをつくるというのはキャッチコピーをつくるということだ、と誤解している人がいますが、そうではないということを皆さんにはご理解いただければと思います。

コンセプトというのは、先ほども紹介したように企画開発者が製品/サービスに込める全体的な「思想」を指しています。そのため、その内容は、必ずしも短い文章である必要はありません。

一方で、キャッチコピーとは、お客様に興味を持たせるための工夫がされた、短い文章のことを指しています。つまり、製品/サービスがよりお客様に注目されやすくなるように、説明の表現などを工夫して端的にまとめたものがキャッチコピーだと考えていただければと思います。

コンセプトとキャッチコピーの2つは、整合している方が好ましいというのは間違いなく、そもそもコンセプトがないと、お客様に響くキャッチコピーを作ることは難しくなってきます。また、良いキャッチコピーというのは、コンセプトのポイントになるところうまく凝縮している、と言えます。

コンセプトを詳細に考える方法

ここまで、製品/サービスづくりではコンセプトを明確にすることが重要であり、また、売れる製品/サービスを構成するコンセプトには「誰がどうなるか」「何を用いるか」「強みや特徴は何か」という3要素が必要である、ということをご説明してきました。

コンセプトの内容をより詳細に考えるには、ニーズ・シーズという概念を理解したり、情報を構造化して考えることが有効となります。そちらについては以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

なお、明確なコンセプトが必要・重要だとは理解しつつも、実際に企画開発を進める時に最初から明確なコンセプトがあることは稀ではないかと思います。

製品/サービスをつくる実際の現場では、色々な観点や角度で情報を整理していくうちに、最も筋の良いコンセプトが徐々に定まってくる、というのが通常です。初期のうちは検討の土壌にはたくさんの情報が挙がり、そこから情報を整理する過程で、焦点(どこに中心を置くか)と解像度(どこまで範囲を絞るか/拡げるか)が徐々に最適化されてきます。

そういった意味で、コンセプトというのは一度できあがったら終わり、というものではなく、常に見直し、ブラッシュアップされ続けていくべきものであると言えます。

今回お伝えした情報を参考にして、ぜひ、あなたもご自身の製品/サービスのコンセプトを明確にしたり、今あるコンセプトをブラッシュアップさせたりしてみてください。