自社の製品/サービス開発を継続的に行うためには、これまでになかった新たなアイデアを見つけたり、開発すべき課題を新たに設定したりすることが求められます。今回は、既存の製品/サービスをより良いものに進化させるためのアイデア・課題の抽出方法を5つご紹介します。

⓪ アイデア・課題を抽出するための大前提

アイデアや課題を探す際、最も必要かつ重要となるのは、対象とする製品/サービスの中身について、先にしっかり振り返っておくことです。これができていないまま闇雲にアイデアを探しても、行き当たりばったりになるだけで、筋の良し悪しを判断することができません。

製品/サービスの中身について振り返る方法については、以下の記事をご参照ください。

製品/サービスのニーズ・シーズを振り返り、必要な情報を整理すると、その過程を通じて、今後に向けた新しいアイデアや課題は自然と見つかってくるものです。まずは上記の記事で紹介された思考法を用いて、自分の中でしっくりくる情報整理ができているかを考え抜くようにしてください。そのうえで、この後に紹介するテクニックを活用すれば、より網羅的に納得感あるアイデア・課題をつくることができるかと思います。

① トレードオフになっているポイントを見つけ、解決策を考える

新たなアイデア・課題を抽出する1つ目の方法は、トレードオフになっているポイントを見つけるという方法です。

例えば、「樹脂部材の強度を上げるために厚くしたいが、代わりに重くなってしまう」とか、「機器の出力を上げると、消費電力も大きくなってしまう」といったように、何か一つの特性を重視すると、別の特性が悪い方向に変わってしまう、ということをトレードオフと言います。

このような、製品/サービスの仕組みの中に存在する何かしらのトレードオフを見つけ出すことができると、それに対する解決策の検討を開始することができ、新しいブレイクスルーを生み出すきっかけが得られます。ぜひ、あなたの製品/サービスの中でトレードオフが発生している場所を探してみてください。

ちなみに、トレードオフの解決策を検討する手法としては、TRIZ(トリーズ)という、問題解決のための発想の手掛かりが40の発明原理として体系的にまとめられたものが有名です。

② 比較して考える

2つ目の方法は、比較して考える、という方法です。

自社の製品/サービスまたはその中に含まれる要素技術を、類似のものや競合他社のものと比較してみてください。似た機能や技術を持つ比較対象があることで、自社の相対的な強み・特徴や差別化のポイントを意識的に考えることができるようになります。

自分では気づいていなかった点や当たり前だと思い込んでいた点も、他と比較してみると意外と強みとしてアピールできる点だった、というケースもよくあります。そういった意味でも、自社以外の取り組みについての情報を収集し、客観的に自社と比較することは重要です。

③ 情報に含まれる5W1Hをずらしてみる

3つ目の方法は、5W1Hをずらしてみる、という方法です。

5W1Hとは、「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」という、情報の明確化に必要とされる要素のことです。

これらのうち、製品/サービスに関するニーズ・シーズの情報を考えることは、WhyとHowを考えることに相当します。また、WhyとHowを考えた結果、製品/サービスを実現するために求められるWhatが導き出されます。製品/サービスづくりでは、この3つ(What、Why、How)を考えることが基本となります。

一方、残りの3つのW(When、Where、Who)を考えると、より積極的に思考を拡げることができます。具体的には、既存の情報から、Wの要素をずらして考えるのです。

Whenをずらすというのは、時間に関する点に注目する方法で、「将来的にも同じと言えるか」「納期を早められないか」「頻度を変えるとどうなるか」といったようなことを考えることに該当します。これができると、「その場で利用して終わりのサービスにするのではなく、アフターサポートを追加で組み込んでみよう」といったように、時系列的に視野を変えたり拡げたりする発想が出てきます。

Whereをずらすというのは、「どこで使うか」「どこで売るか」など、場所や空間に関する点に注目して考えることを指します。これができると、「ウェブ会議システムを飲み会用にカスタマイズしよう」といったように、同じものを別の場所で用いる発想が出てきます。

Whoをずらすとのは、製品/サービスに関わるターゲット顧客や運営者のような、人に関する点に注目する方法です。ここでのWhoとは、「誰が」以外にも「誰を」「誰に」「誰にむけて」といったWhomの要素も含まれるとお考えください。これらを考えると、「ウェアラブルデバイスの対象ユーザーを人から動物に変える」といったような発想が出てきます。

製品/サービスの情報を構造化して詳細に分解すると、5W1Hをずらした発想ができる起点も自然と増えてきます。そのため、5W1Hをずらすという方法は慣れるとかなり使いやすい、お勧めのテクニックです。

④ 制約をつくってみる

4つ目の方法は、制約をつくってみる、という方法です。

これは、例えば、「1分以内に終わらせないといけない」とか、「その場には女性しかいない」といったように、何かしらの制約を仮定することを指します。そして、その制約のうえで何をすべきか・何ができるかを考えるのです。

新しいアイデアを発想したい時、自由さがある過ぎると、逆に難しいことがあります。そのような時は、何かしらの制約を敢えてつくり、検討の対象をより具体的にしてみてください。思考の枠の範囲が絞られることで、考えやすくなる場合があります。

この際のポイントとして、設定する制約は、誰かから与えてもらうのではなく、自らでつくるのだ、という意識を持つようにしてください。自らで制約すなわち思考の枠を意識的に操作することで、意図をもってアイデアを生み出すことができるようになります。そのためには、先ほど紹介した5W1Hを活用して制約の内容を考えてみるのも効果的です。

⑤ “自分事”として取り組めるかを考え直す

5つ目の方法は、“自分事”として取り組めるかを考え直す、というものです。

これは、あなた自身の個人的な想いを素直に見つめ直し、よりモチベーションを高められるゴールや、腹落ちのできる目標は何か、ということを考えたり、個人的に興味がある他の課題がないだろうか、ということを考えたりすることを指します。

製品/サービスの開発を加速させるには、課題を”自分事”として捉えることが極めて重要です。そのためには、あなた自身のやりたいことや得意なことを会社としての製品/サービスの企画開発に整合させることが必要となります。そして、その行為が、課題の本質を探ったり、新しいアイデアを見つけ出したりするヒントになるのです。

最後に

今回は、製品/サービスに対する新しいアイデアや課題の見つけ方を5つご紹介しました。

繰り返しになりますが、最初の項でお伝えしたように、今回紹介した方法を効果的に活用するには、対象とする製品/サービスの現状について先に振り返っておくことが前提となります。既存の製品/サービスに対する理解の解像度を上げておくことで、より効率的かつ効果的に新しいアイデア・課題を抽出することが可能となります。

なお、アイデアや課題を見つけたい場合のテクニックの概念は今回お伝えした通りになりますが、下記の資料では、より具体的なキーワードをリストアップしています。あわせてご参照いただければと思います。

今回ご紹介した情報があなたの製品/サービスにお役に立てば幸いです。製品/サービスに関する情報の整理や新たな課題設定にお困りの際は、オモイエルまでお気軽にお問い合わせください。