製品/サービスに関する情報を整理する際には、「機能」を考えることが有効です。今回は、「機能」を考えることでニーズ・シーズの検討を深める方法について解説します。
機能はニーズとシーズをつなぐ情報

例えば、「急な腹痛を解決したい」というニーズが「腹痛を和らげたい」「早く効いて欲しい」「手軽に服用したい」というニーズに分解されるとします。また、「腹痛薬」という製品が「中身成分」「カプセル材」「包装容器」というシーズに分解されるとします。この時、これらの情報のつながりは、「中身成分が細菌を倒す」や「カプセル材が早く水に溶ける」といった働きの存在によって説明することができます。これが「機能」と呼ばれる情報に当たります。
機能はニーズとシーズの関係をつなぐ情報となります。機能を説明すると、ニーズとシーズの関係をより明確化できる、ということがお分かりいただけるでしょうか。
このような機能を考えると、活用しようとしているシーズの本質的な役割や、顧客のニーズの深層にある課題を明確にすることができます。
シーズから機能を考える
機能とは、「システムの中で担う固有の働き」と定義することができます。
例えば、下図のように、「腹痛薬製品」という製品(プロダクト)は「有効成分」「成形技術」「プラスチック」などの様々なシーズ(技術・ノウハウ)で構成されています。そして、それぞれのシーズは、製品というシステムの中で、固有の働きとして何かしらの機能を提供しています。

製品/サービスについて検討する際には、各シーズがどのような機能を提供するのかを考えることが必要です。そして、顧客が本当に必要としており、価値を見出すポイントは、シーズそのものではなく、その機能であるということを認識することが重要です。
例えば、顧客は単に腹痛薬が欲しいと言うだけであっても、本当は、早く効くことが重要だったり、手軽に持ち運べることが必要だったりします。そのため、顧客に対して製品/サービスの価値を正確に訴求するには、シーズを通じて提供できる機能が何なのか、ということを精度高く考えることが重要となります。
このような点で、機能はニーズの一種として扱うと分かりやすいかと思います。シーズの機能を考え、その中身をニーズのレベルに翻訳できると、用いるシーズの本質的な役割やその必要性・重要性を明確にすることができます。
ニーズから機能を考える
機能を考えることは、ニーズの中身を具体的な課題に落とし込む際にも有効です。
例えば、「重要な会議での発表を成功させたい」というニーズを下図のように分解したとします。この分解の中で下位側に配置される情報は、目的を実現するための具体的な課題だと言えます。そして、この具体的な課題とは、必要とされる機能のことを指しています。

ニーズの実現方法を深掘りして検討する時は、どのような機能があれば目的を達成できるのか、ということを考えると、具体的な課題を明確化しやすくなります。また、必要とされる機能が明確になれば、用いるべきシーズも自ずと明確になってきます。
機能を考えることでニーズとシーズの関係を明確化する
良い製品/サービスの条件の一つは、ニーズとシーズが必要十分の関係にあることです。ニーズに対してシーズが十分に揃っていないと、製品/サービスは成立しません。また、逆にシーズが過剰にあっても、それがニーズにつながっていなければ、顧客の満足度には寄与せず、むしろ邪魔になってしまいます。
そのため、製品/サービスについて考える際には、ニーズとシーズを照らし合わせながら双方向的に考え、両者の関係を整合させることが肝心となってきます。そして、それには、ご説明してきたように機能を考えることが有効となります。

ニーズから考える場合は、目的・課題をどうすれば解決できるだろうか、ということを考え、必要とされる機能を整理します。また、シーズから考える場合は、それで何ができるだろうか、ということを考え、提供できる機能を整理します。そして、必要とされる機能と提供できる機能の双方に過不足が無いかを見直すことで、その製品/サービスに関するニーズとシーズの関係を明確化することができます。
このような検討ができると、製品/サービスに対する理解の解像度を上げ、説明に飛躍があった部分を補完したり、製品/サービスの強みを詳細に分析したりすることが容易になります。ぜひ活用してみてください。
なお、ニーズ・シーズの情報そのものを詳細に整理する際には、構造化が有効です。こちらの記事も併せてぜひご覧ください。