以前にこちらの記事で、製品/サービスのコンセプトを考えるには、ニーズとシーズの両者を照らし合わせながら、双方向的に考えることが重要だというお話をしました。そして、その際に基本となるが「Why/何のために?」と「How/どうやって?」を繰り返し徹底的に考えることだというお話をしました。
また、こちらの記事では、ニーズやシーズの情報を詳細に整理するには構造化が有効である、というお話をしました。
今回は、これらの考え方を組み合わせることで期待できる効果についてさらに解説します。
「Why/何のために?」を考える
「Why/何のために?」を考えるというのは、シーズ側からニーズ側に向かう思考の流れとなります。

具体的には、構造の階層にあわせて、次のことを考えることになります。
- その製品/サービス(プロダクト)によって何の技術を提供したいのか?
- その技術は何の役に立つのか?
- 何を解決できるのか?
- 誰が何を要求しているのか?
- 課題を解決できると何がうれしいのか?
そして、適宜情報を追加または削除しながら、最適な形に全体を構造化していくのです。このような思考をすることで、顧客の真の目的やシーズが果たすべき本質的な役割が明確になってきます。
Whyを考えるというのは、構造化された情報の中で下位から上位を考えることになりますが、その際のコツは、話を飛躍させず、丁寧に一段一段を遡って考える、というところになります。また、シーズに対してWhyを考える場合は、シーズの機能を考えることになります。
例えば、「コップ」というシーズのWhyを考えと、コップの機能として、「水をためる」という情報が出てきます。そして、さらにもう一段Whyを考えると、「水を飲ませる」という情報が出てきて、さらにそこから一段上のWhyを考えていくことになります。
この時、上位側に出てくる情報が必ずしも明確であるとは限りません。その場合は、仮説を立てることが求められてきます。
水を飲ませるのは、「乾いた喉を潤してもらう」ためになるかもしれないし、「薬を飲んでもらう」ためになるかもしれないし、「緊張を和らげてもらう」ためになるかもしれない、といったように、Whyを考えた結果は、確定した事実だけではなく、仮説レベルの情報やアイデア段階の情報となる場合もあります。そのため、Whyを考えた結果は一つに収束するとは限らず、複数の情報が出てくることも多くあります。

「How/どうやって?」を考える
「How/どうやって?」を考えるというのは、ニーズ側からシーズ側に向かう思考の流れとなります。

具体的には、構造の階層にあわせて、次のことを考えることになります。
- どのような原理で目的を達成するのか?
- 具体的な困りごとは何だろうか?
- 課題の解決手段は何だろうか?
- どの技術を活用できるだろうか?
- 最終的にどういった製品構成に仕上がれば良いだろうか?
こちらも、上記の思考にあわせて、適宜情報を追加・削除しながら全体を構造化してください。このような思考をすることで、検討から漏れていた課題やより良い解決手段に気付くことができるようになります。
場合によっては、先ほどのWhyよりも先にこちらのHowから考える方がやりやすい、という方もいらっしゃると思います。WhyとHowを考えるというのには、決まった順番はなく、両方を並行して進めていただくのでも構いません。
なお、Howを考える際には、適切な解決策となるシーズが不明となる場合もあります。そのような知らないこと・考えても分からないことについては、調査が別途必要になります。
WhyとHowを繰り返す
製品/サービスの企画開発を進めるには、このWhyとHowの2つの思考がとても重要です。
WhyとHowを考えながらニーズ・シーズを構造化すると、情報を詳細かつ論理的に整理することができ、製品/サービスの全体像を明確にしたり、その中にある強み・特徴を見出したりすることができます。
精度の高い検討を行うためには、このWhyとHowを繰り返し徹底的に問いかけ、各情報の論理性を何回もチェックすることが重要です。最適な情報整理の方法を見直す過程で、今後の課題、新しいアイデア、その他の気付き等も自然と生まれてきます。
製品/サービスづくりでは、企画開発者が自身の理解と向き合い、理解の解像度を上げながら、より高みを目指すことが求められます。今回ご紹介した方法を用いて情報を整理した結果は、製品/サービスを手掛ける企画開発者の思考や理解を可視化した結果でもあります。ニーズ・シーズについての思考を可視化(言語化+構造化)することで、製品/サービスに対する理解の解像度を上げ、製品/サービスのコンセプトをブラッシュアップしたり、解決すべき本質的な課題を追及したりできるのです。

ぜひ、あなたもご自身の製品/サービスについいて、WhyとHowを考えてみてください。