製品/サービスの構想や企画開発を進める中で困りごとが生じた時、アドバイザーと呼ばれる外部の人に相談してみようと考えることがあると思います。しかし、どの人に相談すれば良いか迷ったり、相談してみたものの的外れな回答が返ってきてがっかりしたりした経験は無いでしょうか。

世の中には色々なアドバイザーがいますが、自身にとって適切なアドバイザーに巡り合うのは簡単なことではありません。そこで今回は、世の中のアドバイザーの種類と選び方のポイントを次の7つの観点から解説します。

  1. 知識提供型か、課題解明型か
  2. “Only to me”のアドバイスをくれるか
  3. 事務局の介在を了承するか
  4. アドバイザーも手を動かしてくれるか
  5. 無料か、有料か
  6. オンラインか、オフラインか
  7. セキュリティやマナーの面で不安は無いか

1.知識提供型か、課題解明型か

アドバイザーを選ぶ際にまず最も気を付けないとならないのは、相談すべきアドバイザーが知識提供型なのか、それとも課題解明型なのか、を確認することです。

知識提供型のアドバイザーというのは、専門的な知識やノウハウを提供することを得意とする人のことです。このタイプのアドバイザーは、例えば「集客するにはどうすれば良いか」という相談に対して、「どのような客層を巻き込みたいのか」をヒアリングし、それに合ったSNSの活用やホームページ構成の見直しなどの具体的な方法を答えたり提案したりしてくれます。

一方、課題解明型のアドバイザーというのは、相談者が持ち掛けてきた悩みや課題に対して、その裏にある真の目的をきちんと把握することから始めようとする人のことです。「集客するにはどうすれば良いか」と相談した時に、「そもそもなぜ集客が必要なのか」ということをまずヒアリングしてくれる人は課題解明型です。そのような人は、「集客がしたいのは売上を増やしたいからだ」という真の課題を解明し、それであれば、「集客数を増やすのではなく商品単価を上げる、という方法もあるのではないか」など、相談者には無かった発想も含めながら一緒に真の課題を設定し、その解決策を考えてくれます。

特定の話に関して具体的な情報やアイデアが欲しいなら、知識提供型のアドバイザーに相談するのが適しています。一方、ざっくばらんに今後の方向性を相談したいなら、課題解決型のアドバイザーに相談する方が適していると言えます。

もちろん、アドバイザーの中には、知識提供と課題解明の両方ができる人もいます。アドバイザーを選ぶ際には、その人が提供できる知識(情報量の多さ)と、課題解明にどの程度向き合ってもらえるのか(思考の深さ)の2点を確認することが重要です。

まず必要なのは課題整理

ここでぜひ意識しておいていただきたいのは、「どうしたら良いかアドバイスして欲しい」という相談と「何をすれば良いかアドバイスして欲しい」という相談は別物である、ということです。つまり、「どうやるか」という手段・解決策の話と「何をするか」という課題の話とをあなた自身が混同しないようにしてください。

本来、前者は知識提供型のアドバイザーに、後者は課題解明型のアドバイザーに持ち掛けるのが適した相談だと言えます。しかし、この両者の違いは、相談者本人も明確に意識できておらず、混同してしまうことが多くあります。

「どうやるか」という手段を知りたかったのに、それを課題解決型のアドバイザーに相談してしまうと、あまり具体的で有益な情報は得られなかった、という結果になってしまいます。また、「何をするか」という課題を決めたかったのに、それを知識提供型のアドバイザーに相談してしまうと、アドバイスの焦点が自身の問題意識から的外れな所に置かれ、ピンと来なかったり時間の無題に感じたりする可能性があります。

上記のような事態に陥らないためには、本当に相談したいことが何なのかを自身の中で明確にし、どちらのタイプのアドバイザーに相談すべきかを事前に確認しなくてはなりません。それには、自身の課題を整理することがまず初めに必要となります。つまり、アドバイザーへの相談を意味あるものにするには、課題を整理することが最初に必要かつ重要となるのです。

課題整理の過程を飛ばして知識提供型のアドバイザーに相談してしまうと、自分の根底にある想いがアドバイザーに理解してもらえないことに心が折れ、自信ややる気が無くなってくることもあります。さらには、アドバイザー側も、何を答えれば良いのか分からなくなってきます。

課題を整理することは極めて重要なプロセスです。しかし、筆者の経験上、自身のみで事前に十分な課題整理ができている相談者の方というのは、ほとんどいらっしゃいません。さらに言うと、課題整理が十分でないことを自覚すらできていない方も多くいらっしゃいます。

課題の整理が自身の力では難しいと感じる場合には、課題解明型の方のアドバイザーにまず相談することが有効です。その際には、アドバイザーのバックグラウンドや実績などを確認し、どの程度一緒に課題の深掘りや視野の拡大ができそうか、ということを判断しなくてはなりません。課題解明型のアドバイザーも、その能力レベルはまちまちです。単に言われたことを整理するだけの人もいれば、相談者との対話を通じて深層を分析できる人もいます。言うまでもなく、望ましいのは後者のアドバイザーです。

アドバイザーを活用して検討を進める際には、まずは課題解明型のアドバイザーとともに課題をきちんと精査し、そのうえで、課題に合わせて都度都度、適切な専門性のある知識提供型のアドバイザーから情報をもらう、というのが理想的な進め方だと言えます。課題を明確にできれば、知識提供型のアドバイザーの中から適した人を探すことも容易になります。

2.”Only to me”のアドバイスをくれるか

もう一つ、アドバイザーを選ぶ際に気を付けていただきたいのは、そのアドバイザーが、”only to me”のアドバイス、すなわち、自身に合った具体的で実行可能なアドバイスを提供してくれそうか、という点です。

あなたが自身の考えを批評して欲しいだけならあまり関係ないかもしれませんが、双方で建設的な議論をしたいなら、アドバイザーがあなたと同じ熱量や目線の高さを持っていることが非常に重要となります。そのためには、アドバイザーに”only to me”のアドバイスを提供できるだけの素養があることが求められるのです。

アドバイザーが”only to me”の対応をしてくれるかを見極める際には、まず、アドバイザーがあなたの取り組みに関する話題に早くキャッチアップできることが必要条件の一つとなります。それには、アドバイザーのバックグラウンドや経験の幅が鍵となってきます。

例えば、あなたが会社の経営者だとしたら、アドバイザーも自分自身で事業をしている人である方が、事情を汲んで説得力のあるアドバイスをくれる可能性が高い、というのはお分かりいただけるのではないでしょうか。

他にも、アドバイザーによっては大企業的な考え方・やり方が体に染みついている人がいます。ベンチャーや中小企業の人がそのようなアドバイザーに相談しても、現場との乖離が大きく、「一般論・理想論によるアドバイスばかりで、現実的には役に立たない」という感想を持つことになってしまうでしょう。

そして、”only to me”の対応ができるアドバイザーのもう一つの必要条件で、最も肝心となるのは、アドバイザーにあなたの想いや相談の背景を深く理解しようとする姿勢があること、です。満足いく相談を進めるには、アドバイザーとの会話の中で違和感が生じた際に、それをうまく説明できなくても、まずはそのことを相手にすぐ言える関係である必要があります。つまり、あなたに寄り添う姿勢やあなたの話をしっかりと聞こうとする姿勢がアドバイザーににあることが極めて重要なのです。

アドバイザーがどこまで自分に寄り添ってくれるか、というのは、実際に話してみないと判断できないことも多いかもしれません。しかし、その人の評判や発信されている情報を調べられる範囲で調べておけば、どのような対応をしてくれるかもある程度想像できる場合もあるでしょう。

アドバイザー選びの際には、その人のバックグラウンドや実績を調べるのに加え、どの程度あなたに寄り添ってくれそうか、という想像もしてみるようにしてください。

3.事務局の介在を了承するか

次は、アドバイザーに実際に会うシーンを想定した際に考慮しておくと良い観点をお話しします。

まず、アドバイザーに会う方法としては、
 ① アクセラレーション・事業支援プログラム
 ② イノベーション施設
 ③ 直接相談(セルフマッチング)
といった方法が考えられます。

このうち、①と②で会えるアドバイザーへの相談では、その運営組織の目的や仕組みの都合上、基本的に事務局が介在してきます。事務局が相談者とアドバイザーの引き合わせを行ったり、相談の結果を踏まえて次のアクションをフォローしたりするのです。

もちろん例外はありますが、大半のケースでは、①と②で会えるアドバイザーは数が豊富である反面、知識提供型にその割合は偏っている傾向にあります。そして、課題解明の役割はアドバイザーではなく事務局が担っています。

事務局が優秀で信頼できる人であれば、自分と一緒になって考えてくれるメンターやチームメンバーのようになり、介在してもらうことのメリットがあると言えます。しかし、基本的に事務局は、その運営組織に所属する、たまたまその仕事にアサインされた会社員です。つまり、課題解明のスペシャリストという訳ではありません。ひどい場合は、アルバイトが対応している場合もあります。

また、アドバイザーに相談した内容や結果は、基本的に事務局を含む運営組織全体で共有されます。つまり、相談者にとっては、秘匿性の高い話がしづらかったり、気軽に愚痴をこぼせなかったりするのです。さらには、事務局は、運営側の都合から、相談者の困りごととは関係の無い所で余計な口を挟んでくる(挟まざるを得ない)こともあります。

このような事実を踏まえ、アドバイザーに会う時には、事務局が介在することのメリット・デメリットを認識しておくことが必要です。もし、デメリットの方が目立ってしまうようなら、直接相談できるアドバイザーを探した方が確実だと言えます。

直接相談できるアドバイザーを探すには、対応してくれそうな人を直接インターネットで調べる方法以外にも、相談者とアドバイザーのセルフマッチングができるサービスを利用して探すという方法もあります。起業に関する相談ができるドリームゲート、スポットコンサルを依頼できるビザスク、スキル取得に関する相談ができるMENTAなどのサービスを利用したり、フリーランスやクラウドソーシングの中からアドバイザー業務を依頼できる人を探してみたりするのも手となるでしょう。

4.アドバイザーも手を動かしてくれるか

アドバイザーの中には、対面時に話したことのメモを共有してくれたり、相談後に追加で自ら調べたことを連絡してくれる人もいます。そのようにアドバイザーが自らの手を動かして何かしらのアウトプットをくれると、対話だけして終わるよりも満足度が高くなることはお分かりいただけるでしょう。

短時間で1回きりの相談なら影響は少ないかもしれませんが、複数回の相談を行ったり、アドバイザーと継続的に付き合っていくことを想定したりするなら、アドバイザーが手を動かしてくれることも重要な観点の一つとなります。同じレベルのアドバイザーが複数いるなら、相談時や相談後に丁寧なフォローをしてくれるアドバイザーを選んだ方がお得です。

5.無料か、有料か

アドバイザーへの相談費用は、無料の場合と有料の場合があります。

一概には言えませんが、アドバイザーの相談料金には、その人のスキルとプロ意識の高さが反映されているべきです。

お金が無いなら、無料のアドバイザーを選択せざるを得ませんが、満足いく回答が返ってくる可能性は有料のケースに比べると高くありません。無料や安過ぎるアドバイザーは、アドバイスの内容自体がチープだったり、対応が粗雑だったりすることがあるので、注意が必要です。

有料のケースでは、相談する側・される側の双方の本気度が一気に変わってきます。アドバイザーにはビジネスとしての責任をきちんと果たす義務が生じます。また、相談する側も、元を取れるよう、より真剣になれます。

有料のアドバイザーへの相談料金は、1回あたり数千円~数万円程度が相場です。もし、あなたが問題の解決を本当に望んでおり、解決されることの価値が高いと考えるならば、それ相応の投資をすることを視野に入れてください。もちろん、アドバイザーは千差万別なので、いきなり申し込むのではなく、無料の範囲で一度やり取りができるアドバイザーだと、安心かと思います。

6.オンラインか、オフラインか

アドバイザーに対面で相談するには、Zoomなどを用いてオンラインで行う場合と、直接の対面(オフライン)で行う場合とが考えられます。

オンラインで対面するには、相談者とアドバイザーの双方がツールの最低限の操作をマスターしている必要があります。しかし、それさえできれば、画面を共有しながら話をすることで双方の理解が深まったり、場所の制約が無くなったりするメリットを期待できます。

一方、オフラインで対面することの最大のメリットは、きちんと顔を見て話ができることだと言えます。人によっては、直接の対面でないと居心地が悪いと感じる人もいるでしょう。

アドバイザーの中には、オンラインの方が得意なアドバイザーもいれば、逆に苦手なアドバイザーもいます。アドバイザーを探す際には、オンライン・オフラインについて、自身の好みとアドバイザーの対応状況を確認することも必要です。

7.セキュリティやマナーの面で不安は無いか

最後に、アドバイザーを選ぶ際にはネガティブチェックをしておくことも必要なので、補足しておきます。

アドバイザーによって、秘密情報の取り扱いに対する厳密さやセキュリティ意識の高さは異なります。あなたの大切な情報を雑に扱われたり、他人にむやみに話されたりしては、元も子もありません。相談したい内容が秘匿性のある話なのであれば、事前に秘密保持契約(NDA)を結べる人であることがアドバイザー選びの際の大前提になってくるはずです。

また、アドバイザーが十分なコンプライアンス意識やビジネスマナーを持っていることも前提として必要です。どんなに斬新で儲かりそうなアドバイスでも、それがあなたにとっての倫理観に反するものであれば、受け入れることはできないでしょう。また、やり取りに際して相談者にストレスを生じさせないように配慮することは、アドバイザーが兼ね備えておくべき当然のビジネスマナーだと言えます。

セキュリティやマナーなどの観点については、それを重要視しない相談者の方も中にはいらっしゃるかもしれません。しかし、もし、あなたがこのような点に敏感で、少しでも不安や不満を抱きそうなら、候補となるアドバイザーのネガティブ要因を確認しておくことも重要となります。アドバイザーがどのような人なのかを調べられる範囲で調べ、ネガティブ要因を持つ人は候補から外し、気持ちよく相談できる環境を整える必要があるのです。

オモイエルの壁打ちサービス

今回は、アドバイザー選びに関する様々な観点をご紹介しました。お伝えしたことの要点は以下の通りです。

  • 課題整理がまだ十分でないなら、知識提供型ではなく課題解明型のアドバイザーにまず相談すべき
  • アドバイザーが相談者に寄り添う姿勢を持ち、”only to me”のアドバイスをくれることが重要
  • 事務局が介在する場合にはデメリットが目立ってしまうことがある
  • 自らも手を動かしてくれるアドバイザーだと尚良い
  • 自身の問題解決の重要度と照らし合わせて、有料での相談も選択肢に入れた方が良い
  • オンラインが良いかオフラインが良いかは好みに分かれる
  • セキュリティやマナーの面で不安が無いことも必要

アドバイザーを選ぶ際には、その人が信頼できる相手かどうかを慎重に見極める必要があります。とはいえ、そこに多くの時間や労力をかけてしまっては本末転倒です。

オモイエルの壁打ちサービスは、製品/サービスづくりの分野で課題解明型のアドバイザーと話ができるサービスであり、まず最初の相談相手としてお勧めのサービスです。コンサルティングとコーチングの要素をハイブリットし、製品/サービスを手掛けるあなた本人の想いに向き合います。相談開始前にオンライン・無料で直接やり取りすることもできますし、希望があれば秘密保持契約を結ぶことも可能です。ぜひ一度話を聞いてみてください。