前回、”技術企画”という活動の内容とその方法・進め方について解説しました。
モノづくり系の業界では、技術企画の言葉を冠した”技術企画部”という部署を設置している企業が多くあります。ただし、企業の技術企画部は、技術企画そのものの活動以外にも多岐にわたる役割を担っているケースが多く見受けられます。
今回は、そのような企業の技術企画部の役割を整理してご説明します。
技術企画部の役割①:技術企画そのもの
こちらの役割は、前回の記事で解説した通りです。対象技術の選定とターゲットする市場の把握を通じて、開発テーマを構築します。

技術企画部の役割②:技術の開発や製品・ソリューション化における課題解決のサポート
こちらの役割は、技術企画ではなく、技術開発のフェーズまたはその先に進んでいるプロジェクトをサポートする、というものです。具体的には、技術の開発や製品・ソリューション化(生産や営業)の現場で生じている技術的な課題の解決をサポートします。

課題解決に向けては、社内の各部署が持っている知見を探す他に、課題を解決できそうな外部のパートナーを探す、というケースも多くあります。つまり、特定の技術やソリューションを持つサプライヤ、開発委託先となる企業、相談相手となる専門家などを探し、マッチングをコーディネートするのです。
世の中の企業では、技術企画そのものは開発部の方が中心となって行い、技術企画部のメインの役割はこのような課題解決のサポートとなっている例もあります。同様な活動を行う部署は、技術企画部以外に、開発推進部といった呼称が用いられている場合もあります。
技術企画部の役割③:技術知見の取りまとめと管理(社内の基盤づくりと基盤運用)
こちらの役割は、技術の開発や製品・ソリューション化の過程で得られた技術知見を取りまとめ、別プロジェクトで再活用できるように管理する、というものです。技術企画が一つ一つのプロジェクトを前に進める活動であるのに対し、こちらは、部署間の連携の円滑化・活性化に向けて社内に横串を刺す活動だと言えます。

この役割において、技術企画部には、社内にある技術的な情報を全社で共有し、誰もが必要な情報を必要な時に参照できるようにすることが求められます。このような目的でつくられる基盤は技術プラットフォームと呼ばれ、技術企画部はそれを運用・ブラッシュアップしていくことが求められます。
技術プラットフォームを構築するには、各部署と密にコミュニケーションをとりながら社内技術や過去知見を棚卸し、散在する各種情報を最適な形で整理しなくてはなりません。理想としては、情報を日常的に蓄積できる仕組みをつくることが望ましいと言えます。
このような取り組みを実現できると、技術企画の対象とする技術の選定に効果を期待できます。また、技術企画以外の現場における課題の解決策を探すことも容易となります。
同様な活動を行う部署は、技術企画部以外に、技術管理部といった呼称が用いられている場合もあります。
技術企画部の役割④:全社的な技術戦略の構築(技術マーケティング)
この役割は、全社的な観点で技術開発の戦略を立て、経営戦略と整合させていく、というものです。

企業がビジネスの機会を最大化するには、複数の技術企画を同時に進めていく必要があります。その中では、進めるべき技術企画とそうでない技術企画を俯瞰的な立場から判断し、会社全体としての技術開発の方向性を明確にすることが求められます。
この役割が必要だと特に強く考えている企業では、技術企画部は技術戦略部や技術マーケティング部といった名前で呼ばれたり、技術企画部とは別にもう一つの部署が設置されたりしている場合もあります。
技術企画部の役割⑤:外部との共創推進
この役割は、社外の組織との共創を促進するというものです。外部の企業や研究機関と自社の連携の可能性を積極的に探り、新たな価値の創出につなげていくのです。

具体的な活動の例としては、自社の技術情報を社外の人でも閲覧できるようにショーケース化して発信することや、社外の人を呼んで共創に向けた議論やイベントを行うスペース(共創スペース)を運営することなどが挙げられます。
昨今は、オープンイノベーションと呼ばれるように、社外を巻き込んで研究開発を推進すること自体が世の中全体で重要視される傾向にあります。ただ、社外の人と接点を持っても、具体的な共創には進まず、お見合いで終わってしまっているケースも多々見受けられます。そうならないためには、社内の技術情報を相手にあわせて過不足なく提供する仕組みづくりや、議論を活性化させるファシリテーションのスキルが求められます。
この役割が特に必要だと強く考えている企業では、オープンイノベーション推進部や産学連携部のような名前で、技術企画部とは別にもう一つの部署が設置されている場合もあります。
まとめ
今回は、企業における技術企画部の色々な役割について解説しました。解説した役割の関係をまとめて図示すると、次のようになります。

技術企画部は、技術企画の活動を中心としつつも、その前後で発生する役割も担うことで、研究開発の取り組みに関する全社的なマネジメントや、総合的な技術力の向上に貢献することが求められています。
もちろん、企業によって詳細は異なりますし、今回ご説明した全ての役割を技術企画部だけで担っているとも限りません。しかし、いずれにせよ、今回ご紹介した役割は、企業全体の中では間違いなく必要となる活動であり、それぞれを強化することで、社内に好循環を生み出せるようになります。
これらの役割を効果的に果たすには、情報を読み解く力(思考力)、情報を調査する力(調査力)、関係者間の情報連携を活発化させる力(場づくり力)を備えた人材が必要です。
オモイエルでは、このような「思考」「調査」「場づくり」に関するスキルの向上や、実際の技術企画部におけるプロジェクトの実行を支援しています。日々の業務でお困り事がある技術企画部の方や、これから新しく技術企画部を立ち上げたいと考えている方は、ぜひ一度ご相談ください。