製品/サービスの企画開発では、「ニーズ」と「シーズ」を考えることが重要です。

「ニーズ」と「シーズ」の概念については以下の記事で紹介しました。

今回は、ニーズ・シーズを考えるうえ知っておくと良いポイントを紹介していきます。

ニーズの持ち主

まず、ニーズを考える際にポイントとなるのが、その持ち主は誰か、ということです。

ニーズの持ち主は大きく分けると、顧客、つまりは製品/サービスを直接的に手にする人と、その他ステークホルダーに分かれます。

顧客は、一つの製品/サービスの中にも幅広く存在しています。例えば、ベッドという製品について考えてみましょう。ベッドを必要とする顧客としてまず思い浮かぶのは、寝る人(一般消費者)になりますが、他にも、ホテルなどの宿泊施設(事業者)も顧客になってきます。

また、その他のステークホルダーとして、顧客だけでなく、自社やパートナーもニーズを持っています。つまり、ベッドの製造工場や寝具メーカーや運送業者なども、ベッドに対して何かしらのニーズを持っていると言えます。

ニーズの持ち主は膨大に存在するため、最初から全方位的に考えるのは難しいこともあります。また、最初からあれもこれもと欲張ると、特徴が無くなる恐れも出てきます。そのため、製品/サービスの検討でニーズを考える最初の段階では、特に重要と思われる顧客に集中するのでも問題ありません。

ニーズの種類その1(当たり前ニーズ / 魅力ニーズ / 制約ニーズ)

ニーズは、その内容によって複数の種類に分けることができます。

1つ目は、当たり前ニーズと言えるものです。これは、「自動車が走る」というように、できて当たり前とされるニーズのことです。逆に、できないと不満につながるニーズでもあります。

2つ目は、魅力ニーズと言えるものです。これは、「自動車のシートが温度調整できる」というように、できると魅力が上がるニーズのことです。これは、できなくても不満にはなりません。もしくは、気付かれることすらありません。

3つ目は、制約ニーズと言えるものです。これは、「自動車の仕様が法規をクリアする」というように、満足/不満とは関係の無いところで加味すべきニーズのことです。

ニーズには、このように色々な種類がありますが、どれに重きを置いて製品/サービスをつくるかには様々なパターンが考えられます。具体的な困りごとがあって、その解決手段を探している顧客にとっては、「当たり前ニーズ」を確実に満たせることが最も重要と言えます。また、製品/サービスの必要性をまだ理解していないような顧客に対しては、「魅力ニーズ」をアピールすることがより重要となります。

製品/サービスを進化させていくには、「当たり前ニーズ」と「制約ニーズ」に確実に応えつつ、新たな「魅力ニーズ」を設定していく、ということがポイントとなります。

ニーズの種類その2(顕在ニーズ / 潜在ニーズ)

ニーズは、他の切り口でも分類できます。それが顕在ニーズ潜在ニーズという切り口です。

顕在ニーズとは、誰の目から見ても明らかなニーズのことで、その内容は明確に表現することができます。一方で、潜在ニーズとは、持ち主自身にもまだ気付かれていない、明確に表現されていないニーズを指します。

世の中に無い新しい製品/サービスを生み出していくには、潜在ニーズを見つけ出すことが必要です。

例えば、「走りたい」という顕在ニーズを抱えている人は、「老後も健康でいたい」ということを裏では考えているかもしれません。また、「走った後に大量に汗をかいてしまう」といった困りごとを本人も自覚していない所で実は抱えているかもしれません。このようなニーズも解決できれば、製品/サービスが魅力的になることはお分かりいただけるかと思います。

顧客は、必ずしも自身のニーズを深く理解・認識できているとは限りません。顧客の潜在ニーズを探るためには、顧客の真の目的や、関連する別の課題を考えることが重要となってきます。目先のニーズだけに囚われず、その上位にあるニーズを意識したり、自社で新規のニーズを設定する、つまり、”新たな価値を提案する”と考える心構えを持ったりすることで、より良いニーズの設定ができるようになるのです。

ニーズの構成

次に、ニーズの構成についてご説明します。

ニーズは、目的から具体的な課題にまでレベルが分かれます。また、持ち主によっても、その位置づけが異なってきます。

ニーズの構成

例えば、一般消費者は「いつも健康でいたい」という目的寄りのニーズのもとで、「健康状態を確認したい」という具体的なニーズを抱えます。そして、そのニーズに応えるためにヘルスケア製品メーカーは「ユーザーの健康状態をデバイスに表示する」という目的寄りの課題を設定し、そのために「デバイスが強い衝撃に耐えられる」ことを具体的な課題とします。さらには、電子基板メーカーは、顧客であるヘルスケア製品メーカーのニーズに応えるため、「デバイスの配線の強度を向上させる」という目的寄りの課題を設定し、より具体的な課題と解決策を検討します。

このような形で、目的寄り(上位側)のニーズ情報と課題寄り(下位側)のニーズ情報を区別することで、情報の前後関係を関連付けて考えることができるようになります。そして、それらを考える過程の中で、見落としていたニーズや新たに追加できるニーズが見つかることも多くあります。

どこまでが目的でどこからが課題か、という線引きは、立場や状況によって変わるため、一概に決めることは難しいと思います。だからこそ、各ニーズ情報の位置づけを自身がどのように捉えているのかを明確化しておくことが非常に重要となってきます。

必要な情報収集も交えつつ、様々な角度から考えてみることで、ニーズの内容は具体化・明確化していくことができます。これにより、製品/サービスの「誰がどうなるか(何をできるようになるか)」といったコンセプトを的確に構築することができるようになるのです。

シーズの種類

次に、シーズについてご説明していきましょう。

シーズとは、製品/サービスに含まれるモノ・技術・ノウハウのことです。特に、製品/サービスの中で用いられる技術やノウハウは、「技術シーズ」と呼ばれます。また、技術シーズと最終的な製品/サービスとがまとめて「シーズ」と呼ばれることも多くあります。

世の中には、部品、素材、設備、分析手法、人材など、様々なシーズが存在します。特に最先端のものに限ることはなく、企業が保有する経営資源は全てがシーズだと言えます。

本来、シーズはニーズの解決手段となるものです。しかし、世の中には、明確なニーズに直結していないシーズも多く存在しています。新しい製品/サービスを企画する際に、社内で保有する用途不明のシーズの活用を期待する企業も多いのではないでしょうか。

シーズは、技術者や研究者の専門性によって磨かれます。他社に真似されにくいシーズは、コア技術として企業の強みに直結するものとなります。

一方で、特にノウハウに関するシーズは、その詳細が特定の個人の中に俗人的に眠ってしまっている場合もあります。企業がR&D活動の基盤をつくるには、保有するシーズをいつでも活用できるように棚卸し、情報を社内で適切に共有できる仕組みを構築しておくことが必要です。

シーズの構成

シーズは、顧客に提供される最終的な製品/サービスから、その中に含まれるユニットや技術・ノウハウにまでレベルが分かれます。

例えば、カーシェアリングのサービスは、自動車やアプリなどのユニットで構成されます。そして、その各ユニットは、部品や加工技術や通信技術などの技術・ノウハウで構成されています。

ニーズに比べると、シーズの構成は物理的に考えやすいかと思います。既存の製品/サービスについて振り返る場面では、それがどのようなシーズによって構成されているのか、ということから振り返ることもよくあります。

最後に

今回は、製品/サービスに関わるニーズ・シーズの種類や構成について解説しました。

念のためですが、重要なのはニーズ・シーズを分類することではない、ということにご注意いただければと思います。重要なのは、今回ご紹介したような切り口を参照しながら、見落としていた情報や新たに追加で設定できる情報を見つけ出すことだ、ということを忘れずにいてください。

製品/サービスの企画開発では、解決すべきニーズと必要なシーズを照らし合わせることが求められます。そのためには、ニーズとシーズの関係を詳細に整理することが有効です。また、シーズの「機能」を明確化することも重要となります。

情報を詳細に整理して考えるには、構造化が有効となります。情報の構造化については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。