すかいらーくホールディングス社が運営するしゃぶしゃぶ食べ放題のしゃぶ葉が「こまめどりプロジェクト」というものを2024年4月からスタートさせたそうです。食品ロスの削減を目指した取り組みで、具体的には、きれいに食べ終わったテーブルの写真を利用客が撮影して会計時にスタッフに提示すると、次回使えるドリンクバーの割引券がもらえる、というものとなっています。内容だけ聞くとシンプルに思えるこちらの取り組みですが、裏には色々な工夫や想いが存在しているようにも感じたので、今回の題材として取り上げてみました。

まず、この取り組みの概要を確認しておきましょう。「食べ放題の業態における食品ロスを削減する」という大目的があり、そのために「客に食事を残させない」という課題をいかにして解決するのか、というのが店としての検討テーマとなります。

客に食事を残させない方法として、多くの一般的な店では「食事を残した客にペナルティを課す」という旨を注意書きなどで示しているケースを見かけます。しかし、しゃぶ葉は、「食事を残さなかった客に特典を提供する」という、客に対してポジティブに働きかける方法をとり、具体的にはドリンクバーの割引券を提供しています。

このアプローチは、利用客に好感をもってもらいやすくなる、良い工夫だと言えるでしょう。もちろん、気軽に割引券を配布できない事情を抱える店もあるでしょうし、他のどの店でも同様な施策を取り入れられるとは限りませんが、このように同じ目的に対してアプローチの性質を変える(ペナルティを課すのではなく特典を与える)という考え方は、他の事例でも参考にできるアイデアだと感じました。

さて、次に考えるべきことは、いかにして「客が食事を残したか否かを判断する」かということです。

単純に思い付くのは、「食後のテーブルの様子をスタッフが確認しに行く」という方法だと思います。しかし、しゃぶ葉では「食後のテーブルの写真を客が退店時にスタッフに見せる」という方法を採っており、ここにはスタッフの労働負荷を低減する工夫が見受けられます。

事実だけを聞くと簡単な方法に思えますが、こちらは、客に協力してもらうという発想が無く、スタッフだけで全てを行おうとしている限りは生まれてこないアイデアだと思います。テーブルを確認する方法とその作業主体を誰にするか、というのを柔軟に考えたからこそ得られたアイデアなのではないでしょうか。

以上のことだけでも、良く考えられているなと思わされますが、この取り組みには、まだまだ面白いと感じさせられる点があります。

まず、「食後のテーブルの写真を客が退店時にスタッフに見せる」という方法には「きれいに食べきることを最初から客に意識させる」という効果を期待でき、それにより「食べきれる量だけをこまめに取るように客に仕向ける」ことが可能となっているのです。これは、「客に食事を残させない」という根底の課題に直接的につながる解決策となり、こまめどりプロジェクトという取り組みの名前の由縁にもなっています。

さらには、「食後のテーブルの写真を客が退店時にスタッフに見せる」ことには、「食べきった客にスタッフが感謝を伝えやすくなる」という効果もあり、それは「店が食品ロス削減に取り組んでいることを客に認知してもらう」ことにつながってきます。しゃぶ葉としては、食品ロスを削減することが本来の課題ですが、企業としての社会的な側面からすると、食品ロスの削減に取り組んでいることを世の中に知ってもらうこと自体も重要な課題になっているのではないかと推察できます。

このような形で、この取り組みは、客側にも協力をお願いしつつ、客側と店側の双方にメリットが生じるように設計されています。

ただ、現時点で取り組みに参加してくれる客は全体の3~4%ということなので、この取り組みを実現させる条件となる「食後のテーブルの写真を客が自身のスマホで撮る」ということは十分には達成できていない課題として残っているのかもしれません。つまり、客側のメリットを増やしたり手間を減らしたりする工夫はさらに求められるのかもしれません。

しかし、写真を自身のスマホで撮ることを客に受け入れてもらえれば、「食事の満足感を振り返る間(ま)が客に生じる」「客が何かしらのタイミングで店のことを思い出す」「店で食事したことを客がSNSに投稿してくれる」などの効果も生まれ、「新規客・リピート客を増やす」ために「店と客の関係性を強める」という、しゃぶ葉にとっては食品ロス以外の課題の解決にもつながってきそうです。

このように、この取り組みは、一見するとシンプルな一つのアイデアを起点としつつ、取り組み全体としての魅力や価値の高め方を色々と考えさせてくれる事例だと思いました。実際にしゃぶ葉の担当者の方がどのような順番で思考を拡げていかれたのかは分かりませんが、アイデアを導入することの効果が連鎖的に拡がり、その必要性についての意味づけもできる面白い取り組みだなと感じます。今回の内容をベースに、会計がセルフレジの場合だとどうすれば良いか、とか、写真の確認以外にもスタッフが客に感謝を伝えられる方法は無いか、などを考えてみるのも面白いのではないでしょうか。

今回分析したような考え方は、他の製品/サービスにも応用できる部分があると思います。本記事が皆さんの製品/サービスにおける新たなアイデアの着想に役立てば幸いです。