アメリカのMIGO Robotics社がクラウドファンディングのKickstarterに掲載した、世界初の階段を移動できるロボット掃除機というのが話題になっていました。今回は、こちらの製品を取り上げながら、ロボット掃除機のニーズについて考えてみます。
まず、一般的なロボット掃除機は、「家を楽に掃除したい」という目的のもと、「部屋を自動で掃除する」というのが基本的な機能だと言えます。そのためには、「十分な掃除ができる」ことが肝心で、吸引や水拭きのような「掃除機能」を高めることがまず課題になってきます。
そして、さらには、「部屋の中を自動でくまなく移動できる」ということも課題の1つとなり、そのためにカメラ・センサ・アプリなどを用いた「ナビゲーションシステム」の性能改善がこれまで盛んに行われてきたといえます。それにより「廊下を自動で移動できる」ようにもなり、1つの部屋だけでなく「複数の部屋を掃除できる」ようにもなってきました。このように、ロボット掃除機は、「家を楽に掃除したい」というニーズに応えるため、必要となる機能の追加や性能の改善に取り組まれてきたと言えます。

ここで、「複数の部屋を掃除できる」という課題に着目し、そのために必要なことを考えると、「廊下を自動で移動できる」以外に、「階段を移動できる」ことも必要なことに気付けるかと思います。フロアを跨ぐ複数の部屋を掃除するには、廊下だけでなく階段を移動することも必要となることが、構造化をしていくと漏れていたポイントとして見つかります。

今回の新しい製品は、この課題に焦点を当て、「自動で階段を移動できる」という機能を備えたところが最大の特徴と言えます。
一方で、階段を移動するだけであれば、ロボットを自動で移動させなくても、「ロボットを人の手で持ち運べる」ようにする、というもっと単純な手段で解決することも考えられます。調べてみたところ、軽量で持ち運びしやすいことを売りにしている他社のロボット掃除機も既にあるようです。

今回のロボットが階段を上り下りするためのハードウェア的な機構や技術にも興味はありますが、それよりも筆者が気になったのは、この「自動で階段を移動できる」という機能は、そもそも本当にニーズとして需要があるのか、という点です。言い換えると、階段を自動で移動させるのであれば、何のために自動で移動させる必要があるのか、ということをもっと考える必要があるのかなと思いました。
そこで、まず単純に思い浮かぶのは、もともとの機能である「十分な掃除ができる」と「階段を自動で移動できる」を組み合わせて、「階段を自動で掃除する」という機能を持たせられる、ということです。これは、「家を楽に掃除したい」という大元のニーズに直結し、その解決の度合いを高めることに貢献できると言えます。
しかし、階段を自動で掃除したい人が誰か、と考えると、通常のマンションで暮らしている人は関係なくなります。そうすると、この機能が求められる市場は一気に狭くなってしまいそうです。製品としては部品が追加され、コストは従来のロボット掃除機よりも上がる方向だと思いますので、これをそのまま市場に展開するのはあまり筋が良くなさそうです。

そこで、「階段を自動で掃除する」という機能を、家の掃除以外のニーズにつなげる、という考え方も必要となってくるのではないかと思いました。つまり、家ではない場所で本製品が利用される状況をもっと積極的に考えるべきなのではないでしょうか。
例えば、オフィスビルや商業施設で、それなりに階段を用いる人がいるような建物に、日々の掃除が大変だという困りごとがあれば、本製品の市場が出てくるかもしれません。労働力不足は世の中全体の問題であり、掃除に無人化も求められるでしょうから、ロボットが自動で階段を移動してくれることの意義も生まれそうです。
今回のテーマは、何を価値の中心とし、そのためにどのような機能を備えるのか、もしくは性能を高めていくのか、という選択肢を考えさせてくれる良い事例だなと思いました。
情報を可視化すると、検討から漏れていた情報や、さらに追加できる情報を意識的に探しに行くことができます。そして、既存の情報との前後関係がどうあるべきなのかを階層的に考えることで、発想が膨らんだり、新しい気づきが浮かんできたりします。このような方法で、皆さんも色々な製品/サービスを分析してみると面白いのではないでしょうか。